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派遣から正社員に登用された人とされなかった人の違いは何だったのか

――派遣から正社員への登用あり。派遣の募集要項の中にそのような記載を見たことはありませんか?

「紹介予定派遣」であれば、就業当初から一定期間派遣として就労し、その後労使双方合意のもとで正社員登用されます。しかし、一般派遣から正社員登用されるケースだってあるのです。もちろん、必ずしもそのような道が開けるわけではありませんが。

では、正社員に登用される人とされない人の違いは一体何なのでしょうか?ここでは、新規派遣として30人が同時にスタートした例から考えてみたいと思います。

まずは横並びのスタートから

派遣として勤務する場合、すでに稼働している業務の中に組み込まれるケースがほとんどです。そのため、派遣された時点では、その職場で誰よりも新参者として仕事をスタートさせるわけですね。

当然、職場にいる人は正社員、アルバイトを問わず全員先輩にあたるわけです。ところが、新しい部門を立ち上げた、あるいは特定の業務を集中して実行するような場合。複数の派遣が同じ日から一斉に業務をスタートさせることがあります。

ある書籍印刷会社での「データ化業務」もそのような形態をとりました。派遣のみ30人が1つのチームとして集まり、既存の紙媒体をデータ化させていくという仕事です。20代前半から40代後半までの男女で編成され、6ヶ月契約の派遣として就業が開始されました。

自然に出来上がったリーダーシップ

同じデータ化業務ですが、実際の役割分担としては4つに分かれます。半年間だけの期間限定のため、ローテーションではなく1つの仕事に従事する方法を選択しました。つまり、およそ7名から8名が半年間同じ仕事を担当するわけです。

最初の頃こそ全員横並びで仕事をしていましたが、いつの間にかグループごとにリーダー的な役割を担う人材が出てきました。経歴こそ違いますが、リーダー達の特徴は概ね以下のようなものです。

  • グループ間で意見が対立した場合、はっきりとした主張ができる。
  • 別グループの進捗状況にも気を配り、全体を把握しようと努力している。
  • 休憩時間や就業後もリーダー的な役割になることを嫌がらない。

いくらリーダー的な役割を担っているからと言って、ただの目立ちたがりでは適性に欠けています。そのため、派遣先の担当者と時間をかけて検討し、リーダーを任せて問題がないかを判断しました。

そして、その後正式にそれぞれがリーダーとして任命されたのです。

契約期間満了、そして2名が正社員へ

6ヶ月という期間は短いようでもそれなりの長さがあります。書籍印刷会社の人事はある時期から正社員候補として派遣メンバー30人をじっくりと観察していたのです。

そしていよいよ契約期間満了が近くなった頃、データ化業務の責任者をしていた社員を通じ派遣会社に打診がありました。データ化業務担当派遣スタッフ30名、そのうちの3名を正社員として雇用したい、と。

その3名とは、リーダーを任された人たちではありませんでした。

正社員登用の件が具体化した時、派遣会社側ではリーダーの中から選ばれるのではないかと考えていました。ところが、実際に選ばれたのはリーダーの指示に従ってフットワーク軽く動いていた人たち。

つまり、『サブ』としての能力に長けていたメンバーが選ばれたのです。3名のうち1名はご主人の仕事の都合で辞退しましたが、あとの2名は派遣契約終了後、書籍印刷会社の正社員に登用されました。

正社員登用への決め手は…

後日、3名を選抜した社員の方と話しをしました。なぜリーダーではなく、あの3名を選んだのか聞いてみたところ、こんな答えが返ってきました。

リーダー達はよく仕事をしてくれました。しかし、あのメンバーだったからリーダーとして機能できた、とも言えます。違う面子と組んだ場合、果たして同じように力を発揮できるかどうかはわかりません。我々がほしいのはどんな部署に組み込まれても、軋轢を生まず円滑に回りだすことができる人材です。

このあたりの考え方については会社ごと、また個人ごとによっても異なる部分ではあるでしょう。サブとしての能力はリーダーに比べると決して派手で目立つものではありません。しかし、見る人はきちんと見て評価をしている、というわかりやすい事例となりました。