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アイデアを出しあえる仲間を集めて居酒屋をコーディネートする

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飲食店の経営は、事前にリサーチして、その地域のニーズにあったスタイルを考えておく必要があります。しかし、その準備だけで成功するとは限らないのが飲食業です。

出店した場所が繁華街から遠くても、イデア次第で人気店になれるのも飲食業です。居酒屋の場合は、駅に近い場所が立地的に有利ですが、駅から遠くても若いスタッフを集めてアイデアを出し合っている店には勢いがあります。

では、どうすれば、そういう店を作れるのでしょうか。

駅から遠く離れて、繁華街からも外れている居酒屋があります。店舗は、古い酒屋の倉庫をリフォームしてアンティークなデザインを取り入れています。

店のドアを開けて店内に入ると、若い店長がその夜の仕込みをしているところです。店内の棚には、昭和の古き良き時代のおもちゃやダイアル式の黒電話が飾られ、焼酎をメインに酒類の一升瓶がショーケースに並んでいます。

店長は、気さくに話しかけてきます。忙しさを感じさせずに、まだ開店時間前にもかかわらず、こちらの用向きを聞いてくれます。ネットで興味を持ったので店内を見せて欲しい、と頼むと、嫌な顔一つせずに店内を案内してくれました。

古い酒屋だったころの名残がそこここに漂っています。昔、麹を作っていた場所は、隠し座敷として使っています。酒を絞る船は、そのままインテリアとして利用しています。米と麹を混ぜる広間は、そのまま木製の椅子と机を並べてメインの客席にしてあります。キッチンは、酒を絞る船の後ろに作られて、客席から料理を作っている様子が見えるように工夫しています。

資金がそれほどないので、仲間と協力して安い物件を当たってみたら、潰れた酒造会社の物件があって、ここに決めました。

駅からは、歩いて20分以上かかる辺鄙な場所です。しかし、駐車場もあり、飲酒しない人を運転手にして来店してくれるお客が多いそうです。

ここの店は、町の若者のたまり場から出発しました。仲間を集めて、楽しい居酒屋を作ったら、みんなで楽しめる。賛同した若者たちは、店内の装飾品として古い家具をかき集め、全員で吟味して店内へ持ち込んだそうです。運転資金も遊びのノリで出資金を募り、仲間のリーダーが最初の店長を努めました。

店には、最初の頃は仲間内しか来なかったそうですが、少しずつ活気のある明るさに惹かれてお客が来るようになりました。そして、軌道に乗ってくると、株式会社にして運営を始めたそうです。

仲間を大切にするのは、当たり前。仲間がいて、自分の居場所がある。居酒屋で稼いだお金は、仲間全員で均等に分ける。それが、この店のポリシーです。

アルバイトで入った若者も、いつしか古株になっていきます。出資金を払って仲間入りする若者も増えていきました。

仲間が増えてくると、店舗の増設に着手して、瞬く間に4軒の居酒屋を作りました。居酒屋のメニューも、研修会と銘打って有名店へ乗り込み、料理や酒の出し方雰囲気まで、いいところは全て盗んでくるそうです。

最初は素人だった若者たちは、しだいにプロの料理人へと育っていきます。グループ内では、売上競争をしないそうです。そのかわり、盛り上がるお店を継続することが目標になっています。

人も動物も生き物だから、明るいところにみんな集まる。

この居酒屋は、形態はチェーン店になっていますが、一つ一つのお店に個性があり、ドラマを演出する舞台だと位置づけているそうです。仲間の意見は、アルバイトからパートに至るまで大切にされ、店の大事な宝にされていきます。そこからも、仲間全員でお店をコーディネートすることが基本的な考え方になっていることが分かります。

うちの店のアルバイト、定着率が高いんです。バイト代も投資と思って、頑張る子はどんどん昇給します。お客さん受けする子は、特別ボーナスを出して頑張ってもらうこともあります。社長から一任された店長の独断で決めていいことになっているんです。

つい最近、頑張っていた子が結婚してやめて、違う場所へ行くことになったとき、その子が店で働き続けたい希望を持っていたことから、その子の住む町の近くに新しい店舗を構えるプロジェクトを立ち上げました。楽しいから、みんな頑張れるんです。そのための投資なら、うちの会社はいくらでもしますよ。

居酒屋の提灯に火が灯り、そぞろにお客さんが店ののれんをくぐってくると、活気のあるあいさつが店中に響き渡ります。一人ひとりが主役の店は、仕事の楽しさがそのまま遊び心になって、来る人を惹きつけてやまない魅力を醸し出します。

利益率でも、回転率でもない、楽しさ率を追求したお店は、飲食業界に風穴を開けるだけの潜在能力を秘めているようです。