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面接の考え方:営業活動としての自己PR・自己紹介

面接の考え方:営業活動としての自己PR・自己紹介

就職試験のハイライトといえば、もちろん面接。面接試験は、社会人になる覚悟ができているかが問われる試験です。ドアをノックした瞬間から、あなたは先生に呼ばれた生徒ではなく、クライアントに自分という商品を売りに来た営業マンなのですから。

では、この営業合戦の勝敗はどこでつくのかといえば、自分を魅力的かつ誠実にPRし、印象づけることができるかどうかです。他にも多くの受験者がいる中で、面接官にあなたを印象づけるには、短い時間で自己紹介できるように準備しておかなければなりません。まさに本物の営業の世界と同じなのです。

面接は営業活動

「自己紹介をしてください」という質問は、就職の面接試験ではかなりよく知られている定番の質問です。それにしてもなぜ面接で自己紹介や自己PRを求められるのでしょうか。

もちろん面接官によって質問の意図には微妙な違いはありますが、いずれの場合でも共通していることは、試験官は純粋にあなたがどういう人物なのかを知りたいのだ、という事実です。

クライアントはよくわからない商品を買うことはありません。そうであれば、自己紹介の最終目的は、あなたは「自分」というという商品を正確に説明することではなく、よく知ってもらった上で「欲しい」と思わせることにあります。

先生の求めるような回答をするのが面接試験ではありません。買うかどうか迷っているクライアントに自分を買ってもらうこと、それが面接という「営業活動」なのです。

何を売り込むのか

しかし、社会人未経験の学生は、自分に自己PRできるほどの材料が見当たらないと悩むケースが多いようです。確かに相手(受験する企業など)にとって役に立つような上等な能力を備えているなどと最初から自信をもっている人はめったにいないでしょう。

しかし、それこそ学生に特徴的な傾向であって、相手の立場から物事を考え始めるという経験を積んでいないからに他なりません。たとえばあなたが「うちわ」を売ってまわっているとしましょう。通常の場合、夏の暑い盛りに営業し、エアコンのない場所や炎天下で活動をしている場をさがして商品の売り込みをします。

しかしもしも、在庫をかかえたうちわを冬場に売ってこいといわれたら、あなたはどうしますか。普通に考えれば、冬にうちわを必要としてくれるようなところなどなさそうに思われます。

しかし売らなければなりません。そこでおそらく、冬場でも過剰暖房などで暑くなりそうなシーンはどこかにないかと考えるでしょう。さらに、うちわの通常の使い方以外にも、別の用途や機能はないか、誰も想像しなかった新たな需要はないかとアイデアを絞るかもしれません。

面接における自己紹介や自己PRも、まさにこうした営業と同じものだといえます。あなた自身の視点から相手に直球を投げ続けても成功しません。必要なのは、会社の環境を分析し、そこに投入する価値のあるあなたの特色を考えて、無理なく上手に自分をアピールすることが重要なのです。

ウェイターに学ぶホスピタリティ

では、具体的にどのように自己紹介を組み立てればよいでしょうか。まず、学生が陥りやすいのは、自分の生い立ちや学業などの成果を長々と説明してしまいやすいことです。

そこでおすすめしたい「受験勉強」は、ちょっと奮発して高級レストランに行ってみることです。ぜひ試してみてほしいのは、メニューを見ずに、あなたが食べたい食事のイメージをウェイターに相談することです。

一流のレストランであれば、あなたの希望をよく聞いたうえで、こんな料理はいかがでしょうかと、ワインもセレクトしながらベストな提案をしてくれるでしょう。

高い料理やお店の都合で料理を押し付けるようなことはせず、お客の希望とレストランが用意できる料理とのベストカップリングをおすすめし、最終的にお客が満足を得られるように取り計らうのが、ウェイターの仕事だからです。

ピンチをポジティブに変える技術

しかし、時にはお店の用意できる料理と、お客の希望とが必ずしも合致しないこともあります。お店は肉料理の専門店なのに、もしもお客が魚料理を食べたいと言ったらどうするか。

こうしたケースへの対応も、一流レストランのウェイターから多くを学べるはずです。あなたが魚料理を食べたいと相談すると、おそらくウェイターはこんな風に応じるのではないでしょうか。

「今日はいい鳥肉が入っていますから、何々風のアレンジでしたら、お魚のようなあっさりとした味わいですし、コラーゲンもたっぷりですから、きっとお連れの彼女にもおいしく召し上がっていただけますよ!」

お店のサービスがお客の想定と違っていた場合の、お店から逆提案する典型的な対応のひとつです。これは、お客の要望をかなえられないための代替案という、普通なら消極的な解決策になりがちな場面を、お客が想定していなかった別の楽しさ、喜びを提案することで、むしろポジティブな場面に変えてしまうプロフェッショナルな対応です。

こうしたテクニックは、面接の際にも大いに役立ちます。自分が会社に応えられるかどうかと悩むのではなく、逆に、会社にとってメリットになり得る要素を、あなた自身の特性から探し出して提案するのです。

事前の準備

しかし、メニューを検討している間、お客はお腹がすいています。ウェイターはだらだらと長い話で引き延ばしてはいけません。ですからウェイターは、お店の得意料理や今日のおすすめメニュー、素材や調理方法を入念に打ち合わせをして、それを完璧に頭に叩き込んでおきます。

そして、お客の希望しているメニューの分野に限定して、気持ちよく料理を決められるように、簡潔に情報を与えながら話題をリードするのです。

面接の場合も同様です。面接の場面における最終的なテーマは、ずばり、会社はあなたを採用するとどんなメリットがあるか、という点なのです。

ですから、あなたは自分自身の中にある「商品価値」という要素を事前に入念に検討し、それが会社にどんな効果をもたらし得るのかを手短に言えるように、完璧に言えるように練習おくことが必要です。

先生と生徒との関係の中で育ってきた学生にとって、自分を売り込むという発想に立って物事を整理し、パフォーマンスすることには慣れていないものです。

学生が一様に自己紹介や自己PR対策に苦労するのはそのためです。しかしだからこそ、すでに社会人としての意識改革が始まっていることをPRする場面でもあるのです。