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契約を理由に派遣先職場の付随業務を断ると適応力が低いとみなされる

派遣契約書の業務内容が「5号事務用機器操作の業務」となっていた場合――。その内容は電子計算機、タイプライター、テレックス又はこれらに準ずる事務用機器の操作、ということになります。

ここだけ読むと「なんのこっちゃ?」という感じでよく意味がわかりませんね。簡単に言えば「主にはパソコンを使用した業務」というところでしょうか。何だ、つまり一般事務のことでしょう?…と思われるかもしれませんが、ここには大きな違いとおかしな弊害があるので注意が必要です。

5号事務用機器の操作って、つまり何なの?

5号業務というのは厚生労働省の通達によるとこうなります。『オフィス用のコンピュータ等を用いてソフトウェア操作に関する専門的技術を活用して入力・集計・グラフ化等の作業を一体として行うもの』言いたいことはなんとなくわかりますよね。

つまり、単純なパソコン操作だったり、伝票に数値のみを入力する程度の仕事じゃないよ?ソフトの機能を駆使してけっこう難しいパソコン操作をこなす業務のことだよ。くだいて言えばこんなところでしょうか。

5号業務は一般事務とは違うのだから……

まあ要は5号業務は単純な一般事務とは違うんだからね、というところになるわけです。しかし、実際に仕事をする現場ではそうくっきりと線が引けない場合が多いもの。ところが、厚生労働省から出された通達は驚きに満ちたものでした。あくまでも働く現場の人間から言わせれば、ですが…。いわく――。

  • 5号業務を実施するにあたり、お茶くみが必要になるとは考えられない。
  • 5号業務を実施するにあたり、電話応対が必要ないのに電話の応対を少しでも行っていたら5号業務とは認められない。

しかし、これを指導される側、つまり実際に仕事をしている人たちにしてみたらどうなるでしょうか?

  • 電話がジャンジャン鳴っているのに、5号で派遣されてきているから契約違反になるので電話には一切でません。
  • 会社にお客様が来たとして、仮に正社員が全員が出払っていても契約違反になるのでお茶は絶対に出しません。

もし契約内容を盾に派遣社員がこういう態度をとったとしたら、どうなると思いますか?「なんだあの派遣は?臨機応変っていう言葉を知らないのか?使えないヤツ!」まあ、だいたいこんな感じで陰口を言われ、社会人としての適応力レベルが低いという評価を受けのがオチでしょう。

現場に混乱をもたらす通達の被害者は…

ところが、お国からの通達には嘆かわしいことにこんな続きがありました。いわく――。

  • 上記のような違反がないよう厳重に監督しますからね。
  • 違反すれば『違法な派遣契約』として取り締まりの対象としますからね。

現場を混乱させるだけの机上の理論のみで構成された法律や通達はこれに限りません。本来は一般事務を1年以上雇用OKにするための、5号業務を利用した違法派遣を取り締まることが狙いなのはわかります。しかし、本当の意味での根本改善になっていないため、派遣として働く人も派遣と一緒に働く正社員も、どちらもが混乱する事態を招くのです。

現状に即していないものほど、はた迷惑なものはありません。最悪なのは、そんなにややこしいことになるぐらいなら派遣を使うのは止めよう、と企業が判断してしまうことでしょうか。そうなったからと言って企業は正社員の雇用を増やすわけではありませんから。

派遣として働くあなたはより賢い道を選択しよう

職場によってはいろいろな掟があります。なかには面倒なだけでなく、理不尽な思いが湧きあがるようなものまであって、時には断りたくもなるでしょう。正直、「何で正社員でもないのにそんなことまでしなきゃいけないの!?」と言いたくなるものもありますから。

とは言え、前述のような理由を挙げて「契約ですから」と派遣先の慣習に従わなかったとします。すると、派遣という働き方の不安定さや、精神的な苦労などはまったく考慮されずに評価が下されてしまいます。すなわち、社会人としての適応力に欠けている――というところでしょうか。これ、本当に理不尽ですよね。

しかし、ここで腹を立てて投げ出してしまってはいけません。ぐっとこらえて派遣期間を満了し、どうしても耐え難いなら契約の更新をしないという方法で一矢報いることもできるのですから。有期雇用契約であることを上手に利用して逃れるのが、現時点では最良の策と言えるのかもしれません。

一番損なのは、一生懸命仕事をしたのにそれらをくだらないことでなかったことにされることです。自身の評価を損ねることがないよう上手に立ち回ることは、その後の就職活動にもきっと役に立つと覚えておいてください。