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転職も怖くない!雇用保険を最大限有効活用する方法とは?

採用試験を経てやっと決まった就職先でも、入社してみたらセクハラやパワハラ、採用時に受けていた説明と全く違う待遇が用意されていた等、転職を考えることも現代社会では珍しくありません。

それでも再就職先を探す時間的な余裕がなかったり、経済的な理由から転職は考えられないと泣き寝入りしている人も多いのが実状ではないでしょうか。そこで今回は雇用保険制度を利用した、賢く転職活動を行う方法をAさんの実体験に沿ってご紹介します。

自主退社ではもったいない!該当する事由があったら会社都合の退社にしてもらう

Aさんの場合、入社した年から会社の経営が悪化し、たびたび会社から欠勤するようにとの通告を受けていました。日給月給制であった上に、労働法で定められている休業補償が支給されることもなく、大幅に給与額が下がることもあり、Aさんは転職を考え始めました。

ただ、Aさんの勤務先は過度の残業や、会社側の独断による社会保険の打ち切りなど、勤務環境の悪さから社員が逃げるように自主退社していくことが通例となっていたため、Aさんも当初は自己都合の退社を考えていました。しかしAさんは家族を養っており、失業すると生活が破綻してしまいます。また新しい職を探す時間的な余裕もなかったため、Aさんはなかなか転職することができずにいました。そこで思い立ったのが「会社都合による退職」です。

退職後、自己都合退社をした雇用保険の一般被保険者に求職者給付が開始されるのは、申請をしてから3か月後になりますが、会社都合でやむなく離職することとなった被保険者は「特定受給資格者」、自己都合退社であっても特定の理由であれば「特定理由離職者」として申請してから7日後に給付開始日が設定されています。(実際の入金はいずれも給付開始日から一か月後。)

雇用保険の被保険者であった期間により給付期間は異なるものの、最短でも3ヶ月間は給付金が支給され、また給付期間内でも決められた条件下で賃金を稼ぐことが可能なので、Aさんもこれなら求職活動中の生活に困ることはないと早速「会社都合による退職にしてもらえないか」と会社に交渉をしました。

円滑に「特定受給資格者」として給付を受けるための、周到な準備を

ハローワークによる「特定受給資格者」の認定は、基本的に「離職票」内の、退職理由を見た上で判断されます。

会社側が誠意を持って「会社都合」による退社としてくれていれば何の問題もないのですが、会社都合の退職者を出すことは場合により会社側に補助金の打ち切りなどの不利益をもたらすために「会社都合で退職してもいいですよ。」と話していても、いざ離職票が届いていてみたら「自己都合による退職」となっていた、なんてケースも少なくありません。

そういったトラブルが生じた場合、ハローワークにて「異議申し立て」をすることもできますが、口頭だけのやり取りでは会社側が「会社都合による退職」を認めていたかの立証が難しいため、「特定受給資格者」としての認定は困難です。もし会社側に交渉し事実を認めさせることができても、給付されるまでの時間的ロスを考えると会社の良識だけに任せておくのは得策ではないかもしれません。

会社都合での離職を考えている場合にまず用意しておきたいものは「退職勧奨同意書」といっていいでしょう。難しく聞こえるかもしれませんが、簡単にいえば「会社都合による退職を被雇用者と、会社の双方が認め合意します」という内容の文書に、記名社印を押したものです。退職届は自主退社の証拠ととられてしまう事もあるので提出する必要はありません。

本来であれば定義は曖昧であるものの、会社都合の退社=解雇ということになるので、「解雇通知書」を会社側から発行することが法により義務づけられています。解雇通知書があれば、会社都合の退社である証明になるため「退職勧奨同意書」は不要です。ただ、会社都合退社を嫌がっている会社では解雇通知書の発行も期待できないでしょう。

そんな時、会社都合の退社であることを立証するのが「退職勧奨同意書」になるわけです。Aさんの場合、証拠となる資料を揃えたことが功を奏し、生活に困窮することなく無事再就職活動を行うことができました。ただし、パワハラやセクハラの場合については立証が難しくなる為、さらにそれらの事実を認定してもらえる客観的な証拠をそろえておくことが必要となってきます。

慎みや思いやりが重んじられる日本の風土から、「そんなことまでしなくちゃならないの?」と思われる方もいるかもしれませんが、恥じることなく職務を全うしてきた人ならば誰もが主張して当然の権利です。そもそも本人に重大な責がある場合は、強制的に会社から解雇され特定受給資格者にすらなれないのですから、毎月支払っている雇用保険をよく知り、賢く利用しましょう。