円滑な職場コミュニケーション クッション言葉を活用しよう・後編
前編では、クッション言葉がどのようなものか、そしてなぜ使う必要があるのかということをお伝えしました。
後編の今回は、具体的なクッション言葉をご紹介します。
まず、前編「どういうときに使うのか?」で挙げた、クッション言葉が必要なシチュエーションを思い出してください。
- 何か依頼をする場合
- 相手の意見に反対する場合
- 相手からの依頼を断る場合
これらはすべて、クッション言葉なしに正直に伝えると、相手の感情を害してしまい、その後の人間関係に亀裂を生じさせる可能性があります。
それでは、それぞれのシチュエーションで、具体的に使いたいクッション言葉を見ていきましょう。
何か依頼をする場合
この場合、気を付けたい相手への思いやりポイントは「相手が何かしているかもしれない」「相手の予定を狂わせるかもしれない」ということです。
前回でも例として少し触れましたが、何かを依頼するとき、相手が暇であることはまずありません(ビジネス上の関係ならなおさら、何らかの別の作業をしているのが普通でしょう)。ですから、「作業の手を止めさせて申し訳ない」という気持ちをクッション言葉にして表現しましょう。
(例)
- 『お忙しいところ恐れ入りますが』書類のチェックをお願いできますか。
- 『お手数をおかけいたしますが』担当者印は引渡し前にいただけますでしょうか。
- 『勝手を申し上げますが』下記候補日のいずれかからご都合の良い日をご指定いただきますようお願いいたします。
相手の意見に反対する場合
この場合、気を付けたい相手への思いやりポイントは「あなたの人格を攻撃しているわけではない」「あなたを蹴落としたいとか恥をかかせたいとか、そういうことを考えているわけではない」ということです。
誰かが出した意見に賛同しかねる場合、反対であることを素直に伝えてしまうと、それを「意見に対する反対」ではなく「意見を言った人(私)に対する攻撃」と捉える人がいます。また、そこまで悪くとらえないとしても、自分の意見より反対意見のほうが周囲の人に多く支持されるとなると、やはり面白いものではないでしょう。
ですから、相手の感情を損ねず、冷静に意見の良し悪しだけを客観的に判断してもらえるよう、相手の人格を尊重する気持ちをクッション言葉にして表現しましょう。
(例)
- 『○○さんのおっしゃることも一理ございますが』このような見方もあるのではないでしょうか。
- 『確かにそのようなご意見もあるとは存じますが』現場の立場といたしましてはそれを採用するにはいささか問題がございます。
- 『親身に考えていただきありがたいのですが』○○さんが担当者でいらっしゃったころ比べ、このような現場の状況の変化もございます。
相手からの依頼を断る場合
この場合、気を付けたい相手への思いやりポイントは「あなたからの依頼だから断るというわけではない」「あなたの立場も理解している」ということです。
人によっては、「私の頼みだからわざと断って、私を困らせようとしているのでは」などといううがった見方をする人がいます。そこまで悪くとらえなくても、同じ人からの依頼を何度も断ると、二人の仲がだんだんぎくしゃくしてしまいます。
また、依頼してきた人も、本人が依頼元ではなく、上司やお客様などからきた依頼事項を単にあなたに割り当てるだけの役割(中継ぎ)であり、あなたに断られたら困ってしまうかもしれません。ですから、そういう相手の立場まで考え、ねぎらいつつも「出来ない」という事実を理解してもらえるよう、優しく、しかし毅然と対応しましょう。相手を思いやるクッション言葉のあとは、はっきりと断る意思を続けるのがポイントです。
(例)
- 『大変申し訳ありませんが』その内容では承諾できません。
- 『非常に残念ですが』ご期待に沿うことはできません。
- 『ご足労いただき恐れ入りますが』お引き取り願います。
- 『失礼とは存じますが』契約内容の変更は致しかねます。
その他にも『差支えなければ』『お気持ちは嬉しいのですが』『身に余る光栄ではございますが』など、様々なクッション言葉があります。
クッション言葉は、相手をたて、その人格を尊重するためのコミュニケーションスキルです。きつい言い方をして無駄に敵を作るよりは、一言クッション言葉を挟むだけで味方を増やしたほうがお得です。是非、様々なクッション言葉をマスターして、活用してください!