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派遣会社がピンハネするからもらえる時給が安くなるって本当ですか?

派遣ってピンハネしてるんでしょ?そんな声を聞くことがあります。これって、果たして本当にそうなのでしょうか?派遣会社というのは民間企業です。税金でまかなわれているわけでもなければ、仕事を紹介してくれるボランティア団体でもありません。

派遣会社も利益をあげていかなければならない民間企業

そもそも民間企業とはどのように運営されているのかを考えてみてください。物であったりサービスであったりと、扱うものはその会社によって違いますが、共通するのはそれらによって収益をあげる、ということです。

派遣会社の場合は、派遣スタッフの労働力というサービスを、顧客である派遣先企業に提供することで利益をあげているわけですね。民間企業なのですから利益をあげていかなければ会社を存続させることができません。

ごく当たり前のことなのですが、どうもきちんと理解されていない節があるようです。わかりやすいように、具体的な例にして考えてみましょう。

時給に差が発生する理由は

ある企業から派遣会社へ、一般事務の派遣依頼があったとします。派遣期間は産休に入る社員が戻るまでの一年間。

月曜から金曜まで、9時から18時までのフルタイム勤務。場合によっては残業あり。昼休憩は社員と同じく1時間とります。土日祝はお休みで、これらの勤務条件はその会社の正社員と同じです。

派遣先企業と派遣会社は時給1800円で契約を交わしました。そして派遣スタッフに支払われる時給は1200円だとします。時間給にしてその差額は600円――。さて、この600円は果たしてピンハネなのでしょうか?

上記の仕事の労働条件を見ると、この仕事は社会保険の適用対象となります。さらには半年を経過した時点で有給休暇付与の対象になる条件も満たしています。

社会保険は労災保険、雇用保険、健康保険・厚生年金保険のことで、保険料については以下のように徴収されることが決まっています。

  • 労災保険…全額事業主の負担
  • 雇用保険…事業主負担率8.5/1000 被保険者負担率5/1000
  • 厚生年金保険…事業主と被保険者で折半

上記の場合でいうと、派遣会社が事業主にあたり、派遣スタッフが被保険者です。派遣スタッフは派遣会社に雇用されて派遣先へ仕事に行くわけですから、派遣先企業が事業主ではありません。

時給の差額には、このような事業主が負担する社会保険料が含まれているのです。

派遣社員にも有給休暇が付与される

さらに、それだけではありません。有給休暇が付与されるようになると、その分もこの差額に含まれることになります。

例にあげた仕事で計算すると、1日有給休暇を取得すると時給1200円×8時間=9600円、それが10日分ですから最大96000円となるわけです。

スタッフが有給休暇を取得したとしても、その分の時間数まで合計して派遣先企業に請求するケースはごく稀です。ほとんどないと言ってもいいぐらいでしょう。

したがって、半年が経過したところで派遣スタッフが強引に有給休暇を10日取得してしまい、その後契約を満了しないで辞めてしまったとしたら、派遣会社としては大きな損失を受けることになります。

単純に10日分の給料を払わなければいけない、というだけでは済まず、派遣先企業からの信頼も失って二重の損失となってしまうでしょう。

「派遣がピンハネじゃないとしても、派遣じゃなくてその会社に直接雇用されれば、もっと手取りが増えるのでは…」…と思ったあなたは根本的に考え方を間違えています。

そもそも、直接採用をせずにそのポジションの労働力を確保したいから、企業は派遣を依頼するのです。

仮にその会社が直接採用をする機会があったとして、果たしてあなたはその企業に確実に採用される自信がありますか?

あるのであれば、一般募集がかかった時にチャンレジするとよいでしょう。ただし、派遣スタッフであれば期間限定ということで許容されるスタッフ像であっても、それがそのまま直接採用される条件に当てはまるとは限りません。

そして、前述と同じ理由から社会保険料分などを考慮したうえで時給を決定することになるのは派遣だろうが直接雇用だろうが同じことです。

そうなれば、企業と派遣会社が交わした契約の時給1800円がそのまま自分に支払われる、などということがありえないことなのは、もうおわかりですね。

職安でもピンハネはない

職安(ハローワーク)を経由して就職した会社から支払われる給与の一部が実は職安の利益になっていた、などという事態があったとしたら、それはピンハネです。

さらにはとんでもない違法行為でもあるので声高に非難されるべきでしょう。ただし、職安の名誉のために申し上げておくと、実際にはそんなことはありません。なぜなら職安は正式名称を『公共職業安定所』といい、国が設置している機関だからです。

仕事を紹介する、という点では職安と派遣会社が同じように見えるかもしれません。

しかし、税金によって運営されている公共の機関と民間の会社を混同して考えることは、愚の骨頂でしかないことをどうぞお忘れなく。