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地域の観光資源を見直してプロデュースし、市町村に売り込む

平成21年から始まった総務省の取り組み、地域おこし協力隊は、3府県204市町村(43道県)の地域で617名の隊員が活動しています。活動内容は、地域おこし支援、農林水産業従事、住民の生活支援、環境保全活動、水源保全・監視活動となっています。

任期は1年で、延長して3年間の活動期間が認められています。隊員は、3大都市圏に住んでいることが条件で、地域行政と連携して事業を執行します。活動内容で一番多い地域おこし支援では、観光資源の開発が事業内容になっているところが多いようです。

少子高齢化の過疎地域に住む人々は、四国地方の限界集落のように、地域の観光資源に無頓着なケースが多くみうけられます。そこで生活することだけを考えていれば、生活の利便性のない土地に住むことは、苦痛を伴う選択肢を受け入れざるを得ない立場に立たされていると考えてしまうものです。

四国地方の限界集落の多くは、四国山地という立地の中で昔から林業を主体とした生活基盤の中で暮らしてきた土地です。こういった土地で活動する地域おこし協力隊員の活動は、観光資源開発よりも住民の生活支援に活動の重点が置かれます。しかし、活動方針の中へ積極的に観光資源開発を取り入れていけば、担当地域へ定着につながる可能性が高く、地域のプロデューサーとしての活動領域が増えてくると考えられます。

観光資源開発の基本は、歩くことです。限られた時間の中で地域を限定して、その土地の特徴を把握し、何を売りにするのか考えることです。そのために、地域を歩くことは重要です。山林、渓谷、田畑といったそれぞれのフィールドには、必ず人がいます。その人たちの生活があります。その生活の中にこそ、新しい観光資源は眠っているのです。その資源を開発するためには、そこで暮らす人たちの知恵が必要です。その知恵を集積して、地域を再構成していくと、新しい可能性が見えてきます。

地域おこし協力隊員になれば、自分の持っているスキルを教えることよりも、地域の人たちから教えられることのほうが多いはずです。住民の生活支援にしても、根本的な支援の理由が理解できなければ解決の糸口さえつかめません。失われたミッシングリングは、その土地の人々にとって大切な場所だったはずです。例えば、過疎地域でありがちな問題に、村に1軒しかなかった商店が閉鎖されてしまった、というケースがあります。商店主は、高齢のためにお店を続けられなかったとしたら、地域の人々は困惑するだけでしょう。

その問題の解決策は、商店を復活させることだけでしょうか。即物的な物の見方からでは、問題解決はできません。地域の人々にとって大切だったのは、その商店を通してのコミュニケーション、商店主の仕入れた町の情報、それらをすべて内包した絆だったのではないでしょうか。地域おこし協力隊は、都市部から派遣された便利屋の要素が強い活動です。もともと、その地域になかったスキルを導入して、新しい事業を起こしていく使命を持った活動家なのです。今までのカラを破って、その中心核に新しい絆を構成することこそ活動の眼目となるでしょう。

先ほどのケースでも、地域の中の商店、という視点でしか現象面を捉えられなければ、新しく商店を作っても失敗するだけでしょう。なぜなら、そこには継続していく、という観点が抜け落ちているからです。地域おこし協力隊の活動は、地域をマネージメントしていくことも求められます。地域で継続していく商店の構築、として考えられる解決策は、例えばNPO法人としての活動にして、地域全体で商店経営をする方向性も見えてきます。そうすることによって、副次的に観光資源の創出という側面も見えてきます。

市町村の行政が取り組める事業には、自ずと限界があります。地域おこし協力隊が企画した内容全てが取り上げられるとは限りませんが、少なくとも現場サイドの声に外からの視点を加えたプラスαの声として聞き入れてくれる可能性が高まるでしょう。先ほどのケースでは、商店経営という視点だけではなく、地域の特産品販売という要素も盛り込むことができます。最初は小さな組織かもしれませんが、地域の協力者を集めることによって外部からの注目を集める要素が形成されます。そこまで見込んで、市町村にこれらの企画を売り込めば、行政の協力を得られる可能性が高まるでしょう。

田舎暮らしは、車で走っているだけでは見えてきません。歩いて、五感で受け止めて、地域の向かおうとしている先を見ることが大切です。協力者は、有機農法の農夫と同じです。土の世話をする農夫のように、未来へ向けての手助けをするだけではないでしょうか。