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違法と知りながら派遣先への事前面接がなくならないのはなぜか?

労働者派遣法により、派遣先企業でのスタッフの事前面接や履歴書の送付などが禁止されていることをご存知ですか?

ところが、実際のところはかなりの割合で直接派遣先企業に出向いての面接が実施されているのです。つまりは、派遣スタッフの事前面接禁止は形骸化している、というのが周知の事実。

実際に派遣として働いた経験のある人であれば、派遣先企業へ連れていかれた経験があるのではないでしょうか。名目は「顔合わせ」や「面談」ということになっていたとは思いますが…。

そもそも、どうして派遣法で禁じられていながら、こんなにも事実上の面接がまかり通っているのでしょうか。

顧客に頭が上がらない派遣会社の実情

ズバリ言えば派遣先企業が事前面接を求めるから、派遣会社はそれに応じているのです。派遣スタッフは派遣会社と雇用契約を結ぶのであって派遣先企業に雇われるわけではありません。

しかし、実際に働くのは派遣先企業。そのため、まったく未知数の派遣を受け入れるのは不安ということで派遣先は事前面接を要求してきます。そして、当然のように建前と実情に差ができてしまう、というわけですね。

どんな経歴の持ち主で、どんな顔をしていて、何歳の人が派遣されてくるのか――。まったくわからない相手を受け入れるのは不安だし高い金を払うのは損をする気がする。

そんな派遣先企業の心情はわからなくもありません。しかし、こう言ってしまうと現在の派遣というシステムが半分崩壊しているような気もしますが…。

多くの場合、1つの派遣先企業をめぐっていくつもの派遣会社が競合することになります。そのため、それぞれの派遣会社は「うちはこんな人を派遣します」とアピールしているのが事前のスタッフ資料であり、実際の面接の場。派遣先企業はその中から一番欲しいと思う人材が選べてしまうわけですね。

そんな中で正統派の派遣会社が「法律ですから事前にどんなスタッフを派遣するかの詳細は明かせません」などと突っぱねたらどうなるでしょうか。

「じゃあ別の会社にオーダーするからオタクはけっこうです」と言われるのがオチでしょう。

そんなわけで、違法だとわかっていても派遣会社は事前面接の要求に応えざるを得ない、というむなしい現実が存在するのです。

ハードルは高くなる一方…

派遣先企業が派遣をオーダーする場合、派遣会社は当然のことながらどのようなスキルが必要なのかを確認します。そしてほとんどの場合、派遣先企業からの要望はスキルだけにとどまりません。例えば……。

  • 経理の実務経験がある。
  • 簿記3級以上を取得している。
  • 年齢は30歳以下で。
  • 独身の女性に限定し、既婚者は子どもがいなくても避けてほしい。
  • あまり口数が多くないが、普通に礼儀正しい受け答えのできる人。
  • 制服のサイズの関係で9号か11号を着ることができる人。

上記のすべてを満たす人を派遣しろ、などという要望などは珍しくもなんともありません。さらには、ある特定の血液型は避けてほしい、茶髪は不可、などなど、驚くほどのリクエスを出されることもしばしば。

「実務のスキルとは関係ないことがたくさん含まれているじゃないですか!?」

などと反論できたら苦労はありません。まさしく、お客様は神様としか言いようのない実態がそこにあるわけです。

複数の派遣スタッフが働く派遣先企業ともなれば、もう絶対にその意向に反論することなどできません。職安とは違い、派遣会社があくまでも民間企業である以上、理想論だけで利益をあげることはできないからです。

雇用の問題が政治の中で取り上げられても、どうも現実に即していない机上の理論が空回りをしているように見えてしまいます。とは言え、雇用や就労は避けては通れない厳しい現実の世界にあることだけは間違いありません。

建前はどうであれ、上手に切り抜けて良い仕事を得られるよう、常にアンテナを張り巡らせておきましょう。