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内航船の仕事は3Kか?海技士免許を取って船員になろう

内航船の仕事は、国内の海上物流を担う仕事です。

船員の多くは高齢化して、若手の職業船員は12~13%に過ぎない実態があります。しかし、アベノミクスの影響で国内の物流が回復基調にあることから、海運業全体でこの構造的な欠陥を補う取り組みが実施されつつあります。そこで、内航船に焦点を絞って就労の可能性を探ってみることにします。

2009年8月31日の内航海運新聞には、職業船員の登竜門の6級海技士について、次のようなニュースを流しています。

短期間で6級海技士〈航海〉が取得できるように

「尾道市と中国運輸局では、海事都市尾道推進協議会を設置して『海のまちづくり』を推進しており、その一環として、昨年から尾道市独自の海技資格者養成課程の構築に取り組んできた。

この養成課程では、通常では2年以上の乗船履歴が必要なのに対し、乗船経験の全くない者でも、10.5か月という短期間で職業船員の登竜門である6級海技士〈航海〉が取得できる制度である」。このことが意味するのは、若手船員の養成機関を充実させ、人材の新旧交代を図りたい海運業の思惑です。

もともと、国内海運を担う内航船は、積荷によって職場環境が違うため基準になる労働モデルがない状態です。1日に2ポートの入出港をする船と、長距離を移動して入出港のあまりない船とでは、仕事の内容に格差があります。

睡眠時間を削られるような過酷な労働環境は、船主の考え方に左右される場合が多いので環境改善には基準になる労働モデルが必要だと言われ続けています。

情報共有で職場の環境改善に

しかし、船という環境は、情報を共有する土台が希薄だったため環境改善にはつながらなかったという事情がありました。そのため高齢化のまま業界全体の考え方が硬直化していたのです。

ところが、インターネットの普及によって孤立していた若手船員に情報の共有という活路が見出されるようになり、職場環境の改善が徐々に進むようになってきました

回復基調に向かっている今こそが改革の絶好機

海運業は、リーマンショック以降、決定的なダメージを受けて低迷状態にありました。ここ数年は、造船業もその影響を受けて2014年問題などの諸問題で不況の波を被る状態が続いています。しかし、景気回復の兆しから海運の復調も予想されるようになり、内航船の動向が注目されるようになっています。

標準労働モデルについては、まだまだ論議の最中ですが、少なくとも情報化の波は内航船に波及しているので、優秀な船員はより労働環境のいい職場へ変わることが可能となっています。このことは、若手の船員が現在の高齢者の技術を学ぶ絶好の機会にあるということを意味します。

なぜなら、小型の家族経営で運営している内航船では若手の受け皿がない状態ですが、比較的規模の大きい船会社の船腹は増加傾向にあり、労働力の不足が懸念されているからです。そこに、技術を持つ船員が集まれば、若手の養成も可能となるわけです。

もちろん、今までの商船学校や専修大学からの就職もこれからは好転してくるでしょう。内航船より、外航船の船員数が1%内外だという事実は変わらないので、この分野での船員確保も海運にとって課題であることに変わりありません。そこで、内航海運新聞に注目したわけです。

船員という職種は、特殊です。航海技術、感天気望などの気象海象の知識、航海機器の運用術、接舷、荷役などの知識は、若手の船員が即戦力として使えるような技術ではありません。

しかし、先のような事情から海運業が若手の人材育成に力を注ぐ必要性が出てきたので、就職の選択肢として十分検討する価値があるのではないでしょうか。

全国には、さまざまな船員養成機関があります。専門学校に入学する場合は、最低2年間の学習期間が必要となります。しかし、尾道海技学院が運営する専修学校、日本海洋技術専門学校のようなケースも徐々に増加してくるのではないでしょうか。

人材不足の感が否めない海運は、長期的な展望を持って職場の労働環境改善に乗り出す兆しがあります。かつては、3Kの職場として取り沙汰された内航船も、情報の共有が可能となりつつあるため、若手船員の孤立問題も解決の糸口が見えつつあります。

また、外航船で問題になっている外国人労働者の増加も海運の懸念材料となっています。内航船では、純国産の船員を確保しているものの規制緩和の流れが内航船にも波及すれば、海洋国家としての日本の存続にも関わる問題となってきます。

シーレーンの確保は、第2次大戦の日本の敗北でも明らかなように、国の根幹に関わる重要問題です。回復基調の今こそが、内航船の改革と人材確保の絶好の機会です。ぜひ、内航船に注目してみてください。