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米VICEを運営する女性社長が対談で見せた子育て論と仕事への情熱

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全米で人気のWEBサイト「PANDO」の社長であるサラが、Evernote社長フィル(友人関係)との対談で、自身を成功へと導いた仕事論と次世代を担う子育て論について語っています。

仕事と育児この両立を見事に成功させた彼女の軌跡は見逃せません。

(参考動画)

エバーノート社長フィルさんと日本の関わり

(軽く日本の話題から)

サラ:フィルさんは、日本で長いこと生活していたようですね。しかも、夢が日本のウィスキーのCMに出ることだったとか。

そのためだけに、大企業を設立しようとしていたんですよね?観客に向かって、この場を借りて宣伝してみてはどうですか?

フィル:はい、本当の話ですよ。スローガンまで作ったんです。次に東京に行くときは、僕の載った大きな看板があって、ウィスキーを手にした僕が『Evernoteは覚える手助けを、サントリ-は忘れる手助けを。』

まだ、交渉は成立してないですが、今働きかけているところです。(笑)

サラ:わたしも、スローガンを考えてみたことありますよ。(笑)

フィル:英語の韻を踏んでいるのが東京で理解してもらえるかわからないですけどね。

人生で一番大切なものと子供に見せたい女性像

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(ここからが本題)

フィル:インタビューは、初めてなのですが、まずはこの質問を。人生で一番大切なものは何ですか?

サラ:子供の笑い声ですね。多くの働くママをインタビューしてきたのですが、みんな口にするのは週末に子供とずっと過ごすことを考えて、『あぁ、二人も小さい子がいる~。どうしよう。大変だ~。』と思うようです。

でもわたしは週末が待ちきれないですし、することなんて公園に行ったり、唐揚げを食べるだけなんですから簡単ですよ!子供の世話は、一番楽な仕事ですね。

フィル:子供が一番大切なものでも、ウェブサイトの社長もしていますよね。それは、子供と過ごすための仕事ではないですよね。

サラ:そうですね。でも、女性として、わたしの子供のお手本になりたいんです。それが、女性に対する考え方を形成しますし、一番いいのは子供達のそばに四六時中いないことだと思うんです。 子供中心の生活で、彼らの私生活に口出しするばっかりじゃなくてね。わたしは子供を自分が主催するイベントなどに連れて行って、バックステージに座らせたりします。 その中で、わたしが描く強い女性とは何なのかを感じ取ってもらいたいと思っています。将来、違うことをしたいと思うかもしれませんが、わたしにとってはそれが母親らしくあることなんです。

フィル:女性の社長なんて、これ以上に自立した女性はいませんよね(笑)。

サラ:そうですね(笑)。でも、家では社長ではいられません。会社では、人にあれこれ言うことができても、子供は関係なしに言い返してきますからね。謙虚でいられます。

フィル:それで、うまくバランスをとっているのかもしれませんね。

サラ:どんなに仕事に情熱を注いでいたような人でも専業主婦になる人はいますよね。私も、今より少しでも仕事が嫌だったら、専業主婦に迷わずなっていると思います。子供の近くに少しでもいたいですし。

でも、子供と過ごすことと同じぐらい好きなのがジャーナリストであることなんです。他のリポーターのために仕事を作ってあげるのも、すごくやりがいがありますし楽しいです。

社長になって感じたこと

フィル:私も今より少しでも嫌な仕事をしていたら、他のもっといい条件の仕事をしているでしょうね(笑)。

さて、以前はベンチャー企業の社長や著名人をインタビューしていましたが、今はご自身が社長ですよね。今でも、昔のようなするどい質問を同じ立場の社長にできますか?

サラ:昔ほどできないかもしれません。今でも答えるのに戸惑うような的を得た質問をしますが、今はその答えに同情しすぎてしまいます。

自分の経験してきたことだったら特にそうなります。金銭的に厳しい時期や役に立たない人を雇って大損してしまった話など。

ジャーナリストは、社長をインタビューしたりすると、こんなことに挑戦するなんておかしいとか、どうしてこんな危ない賭けをしたのかと非難しがちになりますが、いざ社長になってみるとそのような危ない橋を渡らない限りは成長できないことを実感します。

投資家との会話で社長が思うイライラ

失敗するかもしれないとわかっていても、試してみなければならない時もあるんです。投資家がよく言う指摘は、「有力な営業のチームを作らなければいけないのでは?」など当たり前のことで、思わず「わたしが役立たずの営業チームを知ってて雇うと思った?」と言いたくなります。

社長がもうすでに知っているようなことでも平気で投資家は口を挟んでくるので、それが一番イライラして、ほかの社長とも共感できますね。実際に経営する方が外から口出しするより大変なんですよ。

だから、私も企業の社長にインタビューはできますが、いざ書くとなるとかわいそうに思ってしまってうまくできません。どんな状況にあるのか理解できますからね。

若い時にした失敗から学んだこと

フィル:若いときにした失敗で、今の自分なら絶対にしないようなことはありますか?

サラ:一番簡単に説明がつく事実が、真実であるとは限らないということです。特に、わたしがよくインタビューしていたベンチャー企業の社長は、感情的であったり、その人の性格を表すような決断をよくします。

論理的な決断ではないので予測がつかないんです。リポーターが誤った報道を度々してしまうのは、理論的な流れに沿ったらするだろうと思われる決断を勝手に想像してしまうからです。

ほかの社長をインタビューして学んだこと

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フィル:ほかの社長をインタビューしてきて気づいたことはありますか?

サラ:毎日のように新しいことを気づきますよ。両親は教師ですし、私自身MBA(経営学修)も持っていません。だから、いろんなことを日々学んでいます。

フィル:例えば、わたしからは何を学びましたか?(笑)

サラ:先日フィルさんが10億の資本金を持っていたら何に使う?と聞いてくれましたよね。そんなこと夢のようで想像したこともなかったのですが、もっと会社が大きくなったら具体的に何が必要かだったり、どんな人材を雇うべきかを真剣に考えさせられました。

将来像として描くことができたので、今起きている問題も、将来のことを考えながら解決にとりかかることができるようになりました。どうしてこのようなことを考えたのですか?

自分のやるべきことや将来のゴールを見据える

フィル:歳入が1億だったらどうなるか、10億だったらどうなるかと具体的に考えると、そのために何をすべきかも見えてくるんです。

無駄なことは省いていけますし、明確なゴールもわかってきます。自分の仕事内容についても考えさせられますね。今もたくさんしているのに、これ以上会社が大きくなったら何をしていくべきだろうかと。

サラ:フィルさんに最も多くのことを教えてくれた人は誰ですか?

フィル:たくさんの人がいますね。例えば、楽天の三木谷さんは、一緒に酔っ払ってカラオケを歌った唯一の人です。

10年先の大成功を目指して投資する

サラ:フィルさんは、100年もつ会社を作りたいと以前おっしゃっていましたが、これはシリコンバレーではバカにされるほどの大きな夢ですよね。

でも、会社を立ち上げる際にそのような最終的なゴールを作ることは大切だと思うんです。私が資金を集めているときも、この会社を売ることは絶対にありませんと伝えます。

フィル:どのようにいつも資金を集めているのですか?

サラ:投資家に話を持ちかけますが、私の会社の投資家は、大儲けするためではなくて、私の会社の将来に期待して投資してくれています。

失敗することは承知で、その失敗が新しい情報発信を作り出すには不可欠だと感じたんでしょう。少し先の少しの成功ではなく、10年先に大成功を収めることを期待しているんです。

夢が巨大だったのが魅力的だったと思いますね。わたしも強い熱意がありますし、投資家も会社のみんなも、この事業にかける思いが強いです。

みんなが利益を信じていますが、誰も急いではいません。また、一人が株を持ちすぎないようにもしています。8%以上の会社の資産を提供している人はいません。

だから平等ですし、リスクも少ないです。フィルさんは、どんな投資家とかかわっていますか?

投資家と良い関係を築くために

フィル:そうですね。短い期間で利益を得て、株を売りたい投資家もいますが、最後に残るのは同じ夢を持った投資家ですね。そのような方々といい関係を築くことが大切だと思います。

サラ:フィルさんもそうですが、私も投資家に聞きたくないような事実も詳細に伝えるようにしています。

いつどれだけ会社が伸びるような計画を立てているかも伝えて、変な期待を持たせないことです。テクノロジーの経済が苦しかったときは、利益が少なかったですが、それも株主に知らせましたし。

いま必要な人材を雇う

フィル:では、今までに悪いアドバイスをした社長はいましたか?

サラ:はい、たくさんいましたし、わたしも実際にアドバイスを実行して何度も失敗しています。一番の失敗は「将来の企業の大きさに合わせて、適正な営業マンを雇え」というものです。

会社が小さいときに、すごく活躍してくれたセールスマンがいても、会社が大きくなったら首にしなければならないという話をよく聞きました。

実行するのはつらいですし、嫌な気分になります。ですので、将来の会社像に合わせて、将来の問題にも対応できそうな人を何人か雇いましたが、それは全部うまくいきませんでした。

この法則は間違っているんです。そこで気づいたのが、やっぱり現在の企業の問題を解決できる人材を雇うべきだということです。

もしかして、大丈夫かなと最初は疑問に思うような人でも、会社に順応していくかもしれません。将来像なんて分かりませんから、今必要な人材を雇う方がいいんです。

確かに、そうすると、雇ったときにはすごく役に立ってくれたけど、企業の成長と共に変わっていけないような営業マンも出てきます。しかし、それは現実として受け入れて対応しなければいけません。

インターネットのプライバシー問題

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フィル:昨日、アル・ゴアさん(アメリカの政治家)にどうして人々がインターネットのプライバシー問題にそれほど憤慨していないのか質問していましたね。サラさんは、どう思いますか?

サラ:わたしは、今Googleが恐ろしいです。Facebookのプライバシー問題はそれほどでもなかったですけど。

別にFacebookを信頼していなかったわけではなくて、Facebookに載せるようなものは、公共に見せてもいいような内容のものでしたから。でも、Googleは私の考えていることや他の人と交わした会話を知っているんです。

フィル:そのために、私生活や会社のシステムを変えたりしましたか?

Googleはもう二度と信用できない?!

サラ:会社では、もうGメールを使わないようにしました。Googleが私たちのメールを見ている気がしますからね。

フィル:代わりに何を使っていますか?

サラ:確かハッシュメールとかいうものだったと思います。Googleで検索して出てきた結果で、会社や人物などすべてが判断されたりするのが恐ろしいんですよね。Googleは信頼していません。

しかも、GoogleやAppleなど8つの大きな会社がエンジニアの給料を低く抑えていると報道されていました。その証拠がEメールに残されていたんですから、全く何を考えていたんでしょうね。

フィル:どうやったら、Googleをまた信頼することができますか?

サラ:もう、信頼性を失っているので無理でしょうね。従来掲げていたクリーンな方針はうそばかりになっています。

フィル:Googleがロゴの色を変えたとしても、だめですか?

サラ:(笑)だめですね。でも、まだ一部のGoogleのサービスは使っています。

わたしは極端な例で、Google自体はあまり気にしていないのかもしれません。脅迫概念が仕事上強いのかもしれません。レストランで毒を盛られると勝手に想像することもありますし。友達が少なくなってしまいます。

顧客の信頼獲得のための努力

フィル:では、サラさんの会社が信頼を得続けるためにしていることは何ですか?

サラ:多くのことをしています。ブランド名が命ですから。情報をユーザーから聞かなければいけない時も、他のサーバーで情報処理をして、自社には情報が流れてこないようにしています。

こういったところで他社と差をつけています。また、情報が正しく伝わるように、公正であることを心掛けています。

例えば、レボルーションという音楽会社がアイドルグループのツアーを取材してほしい、クルーの交通費も取材料も払うと相談されたことがあります。

専任の取材でしたが、お金をもらっているのが気にかかって、結局考えた末に、お金は一切もらわずに取材させてもらうことにしました。

小さなことでも訴えられてしまうので、常に正しい決断をしていなければなりません。それでもレポーターが訴えられることもありますが、その時は最後まで自社のレポーターを守り切ります。

そのレポーターの首を切るのは簡単かもしれませんが、そういったところに会社の性格が出てくると思うんです。そこで、信頼を集めているんです。

ウェブサイト上の他社の宣伝

フィル:すばらしい。サラさんは、ウェブサイトを作っていますが、煩わしい感じのする他の会社の広告なしにウェブビジネスが可能だと思いますか?広告を気持ちよく掲載できる方法はありますか?

サラ:はい、思いますね。VICE(若者向けのデジタルメディア)も実際にやっていますし。わたしの会社とVICEのアプローチは似ています。わたしたちは、宣伝する会社のマーケットの弱点を見極めて、どうしたらもっとターゲットとする客層に見てもらえるか提案します。

ウェブサイトを見てくれる人の時間を無駄にしたくないので、ピンポイントを押さえたものにします。宣伝する会社もたくさんではなく、少ない会社数で、もっとお金をとるようにしています。読者が広告で嫌になってしまわないようにするためです。

ベンチャー企業が次に注目すべき市場

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フィル:それはそうですね。では最後に、ベンチャー企業の社長が世界において、次に注目すべきところはどこですか?

サラ:最近成長が目まぐるしい発展途上国は、押さえておくべきでしょうね。特に、中国は絶対に見ておかないといけません。テクノロジーの企業もどんどん出てきていますし、マーケットは巨大です。

Facebookを使っている人が何十万人と言われていても、その何十万人はどこから来ているか考えてみてください。企業の社長にも中国への投資や事業進出のプレッシャーがかかっているはずです。

フィル:わたしの会社も中国に投資しています。一緒に中国にも行きましたよね?今日は、本当にありがとうございました。

サラ:こちらこそ。