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就職先は日本だけじゃない! 海外でのグローバルな働き方

日本を相対化する目を手に入れたい! 海外での働き方

学生や若い社会人の間では、今も昔も、海外で仕事をすることへの憧れは高いようです。

昔は憧れだけはあっても、実際に海外で仕事を得ることができた人というと、語学が堪能な一部のキャリア組に限られていた印象がありました。

その後、日本企業の海外進出が増加したことで、海外支社や事務所に派遣される社員が増え、一時的な期間とはいえ、外国で仕事をする日本人は珍しくなくなりました。

さらにボランティア活動やワーキング・ホリデーが一般的になり、その延長として現地企業への就職をかなえる人達もみられるようになります。

このようなスキルをもつ日本人が増加してきたことで、最初から海外に就職口を求めようとする若い人達も珍しくなくなりつつあります。

ここでは、そうした海外での仕事の機会を得る道を紹介し、この傾向が日本人としての働き方にどのような影響をもたらすかを考えます。

海外で働く道:駐在員

チャンスがあるのであれば、海外での働き方としてリスクの少ない道は、日本の企業に就職して、海外事務所などの駐在員として派遣されることです。

いうまでもなく、このケースは海外事務所や支社をもっている企業に限られます。

通常は5年以内で派遣期間は終わることが多いのですが、大企業や公的機関の場合は、駐在員はもっぱら海外の職場間を異動し、いつ日本のポストに戻るという保障がない状態が続きます。

海外事務所への派遣は、会社の命令で行われる人事ですから、渡航費用や引越し費用、住居費などは通常は会社の負担になります。

海外で働きたい、という夢をもっている人にとって、日本企業の駐在員は魅力的な環境であることは間違いないでしょう。

しかしいっぽうで、あくまでも会社の命令があっての派遣ですから、個人的に行きたい国を選べるわけでもなく、経済情勢によっては派遣そのものがいつ縮小または廃止されるかはわかりません。

また、海外事務所をもつ企業というと、多くの場合は採用試験の倍率が非常に高くなりがちです。日本企業の駐在員となることを夢みていても、実際に海外で仕事ができるかどうかは、採用された後にならないとわからないものです。

したがって、海外で働きたいという希望を絶対条件にした就職先としては、採用されたとしても確実性のある道とはいえないことを覚悟しなければなりません。

また、海外で働くことへの情熱が、異文化交流や国際理解といった動機によって培われた人の場合も注意が必要です。なぜなら日本企業の社員として海外に派遣される場合、日本の利益となるための労働であることが最終的なミッションだからです。

海外の現地に投資をしたり、市場を開拓したり、雇用を創出したりすることも、文化交流が目的なのではなく、自社の利益につながらなければならない。そうしたビジネス上の使命を背負って仕事をすることが求められる仕事場なのです。

逆にいえば、生活環境も歴史や文化も異なる国で、さまざまな困難を克服して大きな仕事を達成したいという熱意をもつ人には挑戦する価値のある道といえます。

仕事場としての海外を知る経験:海外ボランティア

就職活動中の学生や、新卒者・第二新卒者といわれる若い社会人は、日本社会で仕事をすることだけでも精一杯で、異なる文化の国で働くことへの具体的なイメージはなかなか湧かないものです。

それでも、適応力が高い若年齢層は、いきなり異文化に飛び込んでも、柔軟な発想とバイタリティで仕事にぶつかっていくことがよくあります。

しかし海外で仕事をする人が必ず現地の人に訊ねられる基本的な質問があります。それは「日本ではどういうやり方をしているのか」ということです。

この単純な質問を前にして返答に窮したときに、はじめて私たちは、日本という国と現地の国とを相対的にとらえなおす視点をリアルにもつことができるといってよいでしょう。

海外駐在員を抱える日本企業への就職をめざすならば、まず、このような視点を事前に手に入れておく経験を積むことは意義があるでしょう。

そのための手段として近年人気が高いのが、海外でのボランティア体験です。

かつては海外ボランティアといえば青年海外協力隊が有名でしたが、昨今は民間団体などが主催したりコーディネートしたりするプログラムの選択肢が数多く提供されています。

例えば旅行会社が行うスタディツアーや、NPO法人などがアレンジするワークキャンプなどがあります。

スタディツアーは、形式上はツアー旅行ですが、有名な観光地をまわる一般的な旅行とは異なり、ホームステイを通して現地の実際の仕事場を見学したり、仕事に参加したりすることをメインに構成された旅行です。

またワークキャンプは、一ヶ月といったある程度長い期間滞在し、現地の人達と共同生活を行いながら、自然保護や文化財修復、難民の救援といった具体的なプロジェクトの達成を目指すものです。

スタディツアーとは異なり、海外で働くことの達成感を味わえることが特徴です。

さらに、よく知られているワーキング・ホリデーの制度を活用するのも一つの方法です。

ただしワーキング・ホリデーは、日本と協定を結んでいる国に限られ、就労ではなくあくまでも休暇の旅行を目的にした青年向けの制度です。

国の社会制度を深く考えさせられるようなリアルな仕事の体験としては物足りなさを感じることもあるかもしれません。

いずれにしても、こうした海外での仕事体験は、ボランティアといわれるものであっても、すべて自己負担になります。海外で働くことの意味を理解する生の経験を得る投資と考えることが大切でしょう。

海外で働く道:現地採用

日本企業の海外駐在員という道ではなく、現地の海外企業で社員として採用される道もあります。

実際の採用口の多くは日系企業ですが、それ以外にも現地の企業や外資系の企業もあり、国の事情と情報収集によっては思わぬ採用があることもあります。

海外駐在員との決定的な違いは、身分が完全に現地にあることです。海外で働きたい、という熱意をもつ若い人にとっては、これは大きな魅力となる働き方でしょう。

なぜなら、現地の人々と同じ目線に立ち、同じ生活感覚を共有しながら、なお日本人というアイデンティティをもって仕事ができるからです。

このような日本以外の国の実情に精通し、歴史や文化を共有しながら生きることは、特定の国のスペシャリストとしての生き方を選択することに他なりません。

とはいえ、現地採用の社員をめざすことには、国次第では大きなデメリットもあります。

例えば給料です。海外駐在員はあくまでも日本の社員ですから、日本の給料をもらい、その上各種の手当ても厚いのが普通で、かなりの好待遇になりがちです。

いっぽう現地採用の社員は、基本的には現地の社員と同等の体系で給料が支払われます。そのため国によっては同年代の日本人の何分の一という低所得になることも珍しくありません。

その上、渡航費や住居、各種保険なども通常は自己負担になります。またビザの取得も大きな壁として立ちはだかります。

そのため現地の人と国際結婚をして就労するという人もおり、現地採用の道を選択することは、その後の自分の人生を見据えた大きな決断になることは間違いありません。

海外で仕事のスキルを磨く:海外インターンシップ

現地採用の就職をめざそうとする人にとって注目したい制度があります。それは、海外就職予定インターンップ制度です。

「紹介予定派遣制度」という派遣法に基づくもので、企業で社員として採用されることを前提に、契約・派遣社員として働ける制度です。

海外就職予定インターンップは、正社員として雇用されることを前提に「研修生」として渡航し、キャリアを積んで、勤務状況や成果が認めらることで正社員となり、就労ビザに切り替えられるというものです。

研修期間は18か月とされていますが、就労ビザに切り替えると最大6年間就労できます。

さらに永住権を取得する道も開かれています。

ただし、この制度が適用される相手国、サポートする企業や職種が限られており、就労ビザの取得が保障されるものでもありません。

しかし現地に何ら人脈が無いという人が現地採用をめざすには活用できる制度で、特にIT関係の仕事や学校の教師といった専門的なスキルをもつ人には大きな足がかりになるでしょう。

しかも、現実的な仕事を通して外国に人脈ができ、テクニカルな素養を高めながら、自然に生きた英語の能力を高めることができます。

一般的な語学留学とは違った現実的なスキルを身につけることができるため、仮に現地就職ではなく日本での就職に切り替えたとしても、その経験が必要とされる可能性は高いでしょう。

海外で働くスタイル

一般に日本人は働き過ぎ、とよくいわれます。

内閣府経済社会総合研究所の調査では、日本人は家庭の時間を犠牲にして長時間労働になっていて、いっぽう欧米では家庭に時間を割くために効率よく仕事を終わらせる傾向がある、と指摘されているようです。

その背景には、日本の働き方はチームプレーで、他国では個人プレーが基本になっている、という文化的な違いがあると言えます。

海外駐在員として働くにせよ、現地採用社員として働くにせよ、いずれにしても海外で仕事をすることで、日本人の働き方を相対的に見直すリアルな経験ができることは、何にも変えがたい大きな財産になるでしょう。

日本は戦後、高度経済成長時代を通じて、猛烈に働き、その結果として世界的にも類例をみないほどの高い経済発展を実現してきました。

その背景には、固定化された年功序列制度があり、またプライベートと仕事との区別があいまいな日本特有の精神文化があったのです。

しかし現代では、若いうちから海外に飛び出して、外国の文化を吸収してくる人達が珍しくなくなり、働き方に対する日本社会の考え方も大きく変化しました。

とはいえ、外国の人達の働き方にふれることで、チームワークを重視する傾向や、高い完成度を求める実直さといった日本人の特性に改めて気づかされることも重要な経験でしょう。

海外に飛び出し、それぞれの国の人達の働き方を相対化してみる経験をどのように生かすか。それが今後ますます問われてくるでしょう。