職場環境を改善しよう! 人対人のコミュニケーションを機能させる
企業の業績を左右する要素というものは多岐にわたります。
景気の動向や経営判断といった直接的な要素だけでなく、社内の人間関係という間接的な要素も、とても大きな影響をもつことがあります。
特に雇用環境が大きく変わってきた近年、正社員と非正規雇用者といった立場の違いが複雑化し、職場の中での人間関係が悪化するケースがみられます。
このような雰囲気の悪化は社員のモチベーションを低下させ、結果的に会社の業績にも影響を与えてしまうことにもなるのです。
そこで、組織の中で、あるいは自分の周囲の人間関係の中で、どのようにして健全なコミュニケーション環境を築けるかを考えてみましょう。
現状を分析する
よくいわれていることですが、一人ひとりの力ではできないことが、組織になると大きな力を発揮できます。
しかしそれは、個々の力が健全に結びつくことが前提で、ばらばらな状態では逆に組織力は低下します。
人が他人と力を合わせるためには、他者の立場を理解し、同情し、支えあう関係を築かなければなりません。
しかし相手を理解するための情報が不足していると、何を考えているのかわからないという恐怖心が芽生えます。最悪の場合、たがいに敵視し合い、拒絶し合う関係に発展してしまうものです。
このことは国どうしの外交関係を考えれば理解しやすいでしょう。
そこで、職場における自分の周囲を見直してみましょう。
まず同年代どうしのヨコのつながりで、コミュニケーションの機能不全に陥っている要素がないか。次にタテのつながり、すなわち上司との関係で信頼関係が築かれていると言えるか。
さらに、自分の部署と他の部署との関係で、いがみあったり衝突したりしていることがないか、確認してみましょう。
そこに障害がある場合、あるいは原因不明ながらムードがよくないと思える場合、対策が必要です。
しかし、いきなり雰囲気の環境改善を考えようとしても、なかなかうまくはいきません。
まずは、社員どうしがお互いの仕事や人間性を可視化できる手立てを考えること。「みえる化」の環境を整備することが、社員どうしの相互理解をうながす基盤づくりを考えてみましょう。
制度としての改善策
一般に小規模の事業所の場合は、日常のコミュニケーションが視覚的に把握しやすいものですが、組織が大きくなるにしたがってそれが見えにくくなります。
そこで、社員個人のコミュニケーション能力に依存するだけでなく、組織として意思疎通を良好にするための制度化が有効になってきます。
昔は上司と部下が飲みに出かける風景がよく見られ、それが組織のタテの信頼関係を支える重要な役割を果たしていました。
しかし個人の時間が尊重されるようになった現代では、むしろ勤務時間中に機能するシステムが大きな役割を果たします。
そのひとつとして期待できるのは、社内SNSや社内ブログなどを活用した、社員一人ひとりの個性を共有するシステムです。
これには、情報の即時性と広範な共有性という点で大きな利点がありますが、注意も必要です。
まず、一般的に世代によってシステムの操作性に大きな差があるため、タテ関係のコミュニケーションを図るには効果が限定的だということです。
また顔が見えないSNSには、一つの発言をきっかけに逆に人間関係を悪化させるリスクも潜んでいます。
そこで、社内SNSや社内ブログを補完的に活用しながらも、たがいに顔をあわせたコミュニケーションの方法を軸に考えることが大切です。
仕事に差し障るような面倒なシステムではなく、自然に円滑な意思疎通をはかる手立てを考えてみましょう。
小さなアクションで職場を明るくする
人と人が顔を合わせる環境設計には、近年いくつかの企業で実践され、効果をあげているものがあります。
たとえばオーソドックスな研修制度のほか、若年社員による「ジュニアボード制度」などがあります。
あるいは社員どうしのオープンな意見交換をうながす「コーチング」、中には、座席を特定しない勤務環境にした「フリーアドレス」といった試みもあります。
しかし、まだ採用から間もない若手社員には、組織の制度設計を提案していくのはハードルが高いでしょう。
そこで、個人の心がけで改善できる日常的な実践例を考えてみましょう。
まず第一に推奨されるのは「あいさつ」です。
ありきたりな実践ですが、仕事が忙しく、また慣れ親しんだ社員どうしでは意外に軽視されてしまうものです。
「おはよう」「お疲れさま」という一言を、心をこめてきちんということ。特に、話しづらい相手、ぎくしゃくしている相手にこそ徹底することが効果的です。
そうしたちょっとしたあいさつ程度から始めたら、次に、日常の中で相手を認める声がけをすることことが有効です。
たとえば「今日はなんだか元気だね」とか、「あの提案書、よく練ってあるね」といったことでも十分です。
大切なのは、人は自分を認めてくれる人とは対立しにくいものですし、認めてもらうことで気持ちが明るくなるものです。
このような実践はささやかな一歩にすぎませんが、自分のアクションだけでできる改善策であることは確かです。
この小さな心がけが功を奏せば、やがて職場の雰囲気を変え、さらには会社全体の人間関係を健全にしてくれるでしょう。
昔の職場と比べると、コンピューターや携帯の発達で、意思の疎通のあり方が劇的に変化してきました。
しかし、こと人間関係という課題は、対象が人間という不安定な生き物であるだけに、機械を使っても成し得ないことがあります。
むしろ、機械に慣れすぎてしまうことで退化してしまった人間の本来の機能もありそうです。
明るく活力のある職場環境には、必ずそうした人間の機能が健全に生きているものです。
自分の周囲をみわたして、雰囲気を悪化させている要因があったとしても、そのことを直接指摘するのではありません。
要は、互いに認め合えい、すべての社員にとって働き心地のよい環境にすること。
そのために、自ら小さなアクションを起こしてみてはいかがでしょうか。