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人生どう生きるべきか、自分の思想をしっかり培う教科はこれ

私は私立学校に勤務しています。私立学校は公立学校と違い、それぞれの学校の創設者の思想を基にした建学の精神というものがあります。授業においても、一般的な国語、数学、英語といった教科以外に、1単位で総合的な学習というのがあります。

宗教系の学校であれば宗教という教科があります。本校では文明論という名称です。これは主に担任が週1時間、自分のクラスで行います。他の教科と同じで評価も出します。私は英語の教員ですが、この文明論という教科の推進委員も担当しています。では実際にどういう内容を教えているのか紹介したいと思います。

文明論とは何か、またそれを学ぶ意義

 

昔から現在もそうですが、日本の教育はどうしても知識偏重型の傾向にあり、覚えること、暗記することを重視し、試験の点数にこだわります。定期考査や模試等の成績により、進学する高校、大学も決まってきます。

文科省は近年、再三に渡り、これからの教育は、暗記、記憶することよりも自分で考える力を養成しなければならないと言っています。そのためには、普段学校で習っている受身型の学習形態から少し離れて、自分自身で様々な自然現象や社会の動きに積極的に疑問、関心を持ち、解決していこうという気持ちと能力が必要になってきます。

若いうちから自分の考え方、思想をしっかりと持つことは、これからの人生においてとても大切なことだと思っています。これを勉強したからすぐ役に立つというものではありませんが、将来的に色んな場面において、幅広いものの見方、考え方が出来るというのは大切なことだと言えます。

本校は大学の付属校であり、大学院生から幼稚園児までこの文明論という科目を習っています。そういう面では文系、理系を問わず、人間としての生き方を学ぶきっかけとしてありがたい機会だと思っています。

教える側、教員も色んな方面から、いかに生徒たちに興味を持たせ、考えさせることが出来るか、自分の専門教科以外のものですので、勉強や準備が大変かもしれません。私が感じている部分では、国語や社会科の先生は割と上手く授業展開が出来ています。保健体育の先生とかは苦手な方が多いように感じます。

文明論という教科の内容

自分でしっかり考えろと言っても、教材が何もなければ学ぶきっかけがありません。本校が題材としているテーマをいくつか紹介しましょう。国際、平和、人権、福祉、環境、科学、情報、生命、倫理、家族、スポーツ、知的財産等があります。

それらのテーマをもとにディベートをすることもあります。英語の教員研修でも英語ディベートというのがあり、私自身も何度も経験してきました。ディベートと言うと主張をぶつけ合って勝ち負けを決めるようなイメージがありますが、そうではありません。

私が感じるには、ディベートを行うことで準備段階から自分たちの物の考え方がしっかりと出来るようになります。肯定側、否定側の両方の立場から、証拠に基づいた論理的思考が養われます。アメリカの教育ではとても重要視されています。しかも小論文試験が大学入試で多く取り入れられているので、文章の構成をするのにもとても役に立ちます。

どういう風に教えるか

教員の方はよくご存知だと思いますが、教え方としては、他の教科と同じように指導案が用意されています。時々公開授業もあります。導入、展開、まとめの流れです。

例として、私が得意としている分野は国際です。やはり英語の教員だからだと思いますが、導入として、国際化のイメージを考えさせます。自分の好きな国や料理等、スポーツ等何でも良いので発表してもらいます。

次に一般的な国際化の意味を説明します。展開として、私自身が今まで行ったことのある外国の写真をパワーポイントスライドを使いながら説明し、世界各国の事情を一緒に考えていきます。海外で活躍するスポーツ選手や文化人、料理人を取り上げたりもします。

つまりこの教科は受身型ではなく、あくまで生徒が自分で考えることが大切なのです。そのためのワークシートも用意します。まとめとして、これからの国際化社会で生きていくうえで、求められている資質とはどんなことがあるか提示し、話をしていきます。

例えば、コミュニケーション能力、英語力、異文化理解、環境適応能力、専門性等があります。これと言った正解は無いのですが、これからの人生を送っていく中で、どういうことを心がけ、どういう視点に立って、物事を考えていくのかを養っていきます。

新聞にも載っていましたが、東京都では公立学校の教員志望者だけではなく、異動の無い私立学校勤務志望者が増えているようです。私立学校の場合、学校独自の採用方法が多いです。卒業生を優先的に非常勤講師として採用し、授業、クラブ顧問や寮監も担当して、実績が認められれば常勤講師になり、数年後専任教員になる場合が多いです。