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誤用が定着した日本語をビジネスで使用する時に起こりうる問題と対策

突然ですが、あなたは自分の使っている日本語が100%正しいと自信を持って言えますか?世の中にはたくさんの「間違いやすい日本語」があり、常識と知識を兼ね添えた一人前の大人でも誤って使っている言葉がニュース番組やクイズ番組などで頻繁に取り上げられています。誤用を指摘されると「言葉は日々変化するもの」「意味が通じればよい」と開き直る方もいます。

確かに「意味が通じればよい」のですが、一つの言葉を正しい意味で使用している人と誤った意味で使用している人がいた場合、お互い意思の疎通ができていると思い込んでいるのに実は異なることを主張しているということが起こりかねません。実際の主張が異なるわけですから、その思い違いが後々大きな問題に発展する可能性さえあります。

今回はビジネスの場でよく聞く単語のうち誤用されがちなものをいくつか例示し、最後に誤用を防ぐためのワンポイントをお知らせしたいと思います。

間違いやすい日本語その1・塩漬け

正しい意味:熟考する→誤った意味:放置する、後回しにする。

本来は、時間をかけてゆっくりしっかり考えて形にしようという意味の「塩漬け」ですが、とりあえずおいておこうという意味で使う人が多いようです(「棚上げ」と混同していると思われます)。

「この案件は塩漬けにしましょう」と言われたときに、その案件をじっくり検討してくるべきなのか、それとも今は考えなくてよいのか、言葉の意味を間違えてしまうと作業の重要度も間違ってしまいます。

間違いやすい日本語その2・煮詰まる

正しい意味:(アイディアなどが)まとまる、形になる→誤った意味:行き詰まる、どうしようもなくなる。

語源は、煮込み料理が十分に不要な水分を飛ばされて、うまみがギュッと凝縮されて完成すること。つまり、十分にアイディアなどがまとまり、完成した状態を指します。ところが「行き詰まる」と混同したのか、物事が立ち行かなくなったときに煮詰まると表現する人が増えています。

「あの案件はどうなった?」と部下に聞いて「煮詰まってきました」と言われたから「順調なのか、よしよし」と思っていたら、実はにっちもさっちもいかなくなっていたなんてこともあります。

もっとも、ある調査によると、「煮詰まる」は、誤用している人の方が多いとか!ほとんどすべての人が「行き詰まる」という意味で使っているなら、それはそれで意味は通じるのかもしれませんが……。

間違いやすい日本語その3・気の置けない

正しい意味:気安い、気兼ねが要らない、遠慮の要らない→誤った意味:油断のならない、警戒すべき

「あの人は気の置けない人だから」と言われたときに、あなたは「あの人」をどんな人だと思うでしょうか。本来は「気兼ねなく話せる人」「気安く(フレンドリーに)接することのできる人」という意味なのですが、全く正反対の意味に誤用している人がいます。

例えば新しく担当することになった会社に挨拶に行ったとき、前任者から「この会社の担当さんは気の置けない人だからね」と言われ、それなら腹を割って話した方がいいと判断しいろいろ正直に話をしていたところ、実際には人情味の薄いとても抜け目ない相手で、こちらの内情を全て把握されて出し抜かれてしまった、どこが気の置けない人なんだ、と前任者に文句を言いに行ったら「だから気の置けない人だって忠告しただろ?」と逆に怒られてしまった……などという悲劇が起きてしまうかもしれません。

いかがですか。この中にあなたが誤用しているものはありましたでしょうか。

言葉を正しい意味で使っている人はもちろん、誤用している人も「自分は正しい言葉を使っている」と信じているために、お互い言いたいことが正しく伝わっていないことに気づいていません。

一番の問題は誤用をしていることではなく、それにより「言いたいことが伝わらない、間違って伝わっているのに気付かない」ということなのです。 これを防ぐためには、相手に何か言われたときに、別の言葉に言い換えて聞き返すという手段が有効です。

例えば「気の置けない」であれば、前任から「あの担当さんは気の置けない人だから」と言われたときに「そうなんですか」と流してしまうのではなく「それじゃなんでも相談できそうですね」などと言葉を言い換えて返すのです。

前任が正しい意味で使っていれば「そうそう、本音ベースで話していいと思うよ」などと返してくるでしょうし、誤用していれば「なんでそうなるの。絶対相談なんかしちゃダメだよ」などと返してくるでしょう。

これにより、相手が本当に伝えたかったことはどういうことなのかを正しく知ることが出来、トラブルの発生を避けることが出来るかもしれません。