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企業の禁煙化で失われる喫煙所でのコミュニケーションが持つ効果とは

厚生労働省が、企業の分煙への補助を強化した。対象の業種を旅館・飲食店・料理店の3つに限っていたが、これを全業種に広げ、補助率も費用の4分の1から2分の1へ引き上げた。

2011年の調査では、受動喫煙についてまったく対策を行っていない企業は、従業員500人以上の企業では、1%以下だった。しかし、従業員数が10人から29人で2割、30人から49人でも1割が対策無しだった。企業規模によって分煙に格差が生じているという結果だ。これを解消しようと、上記の補助強化の動きとなった。

喫煙室が設けられていれば、タバコを吸いに喫煙室に行くことになる。休憩時間でなくても、喫煙を理由に休憩することが許される訳だ。これをおもしろくない、と考える「非」喫煙者も多い。実際に経営サイドに「不公平だ!」と声を上げ、非喫煙者専用の休憩室を勝ち取った例もある。

しかし、タバコを吸わなくても喫煙室には行く!というツワモノもいる。休憩がしたいのではない。「喫煙室にはコミュニケーションがある」というのが理由だ。他部署のスタッフや普段顔を合わせることのない上司も一緒に一服しながら話ができる。実はそこで仕事が進んだりしていることもある。喫煙室に行くメリットをもう少し考えてみよう。

他部署の誰が得意としているのかを知ることができる。そうすれば、自分だけでは処理できないことを適切に依頼することができる。また、ウワサや流れのような不確定な情報に触れることができる。確定情報としてオフィシャルになるには時間がかかり、その時点では遅すぎることもあるのだ。

それにしてもタバコの煙がどうしても我慢できない、という声もあるだろう。要は縦割りでは作れない人間関係をどう作るか、ということなのだから、「部署横断のプロジェクトに参加する」「ツテを使って他部署の飲み会に参加する」などの方法でも同じ効果は得られるのかもしれない。

喫煙率は、1966年の83.7%をピークに2011年は33.7%で右肩下がりを続けている。一方煙草の値段は、デフレをどこふく風と右肩上がり。全面禁煙に踏み切ったり、入社時点で喫煙者お断りを掲げる企業も出てきた。喫煙室コミュニケーションも風前の灯なのだが、その効能を記憶に留めておく必要もあるかもしれない。