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職場でよく聞く「有識者」って誰を指すの?正しい有識者の選び方

事例……確認は誰にすればいいの?

ここはとあるIT会社。社内開発部の進捗会議が開かれています。各部署の進捗報告が終了し、そろそろ解散かと思われたとき、ソフトウェア開発部の斉藤さんが口を開きました。

斉藤「そういえば、○○社さんから、社内基幹システムを刷新したいというご相談を受けたのですが、私の部署ではパッケージの開発の経験しかなく、基幹システムについては詳しくないので、社内に持ち帰って検討させていただくとお返事をしたのですが、基幹システムにお詳しい渡辺さんの部署で受けていただけませんか?」

渡辺「うちは基幹システムの保守運用についてはノウハウがあるけれど、刷新となるとまた別の話だなあ。リプレース(基幹システムの置き換え)なら横田さんの所で経験があるんじゃない?」

横田「確かに中小企業のリプレースは何件かやりましたが、○○社さんのような大手は手がけたことがありません。一口にリプレースと言っても全然違う話です。正直なところ、経験のない当社では難しいんじゃないですか」

斉藤「でも、ソフトウェアの実績を高く評価してうちに持ってきてくれたんだから、是非受けたいんだよね。だれかわかる人いないかなあ」

そこで、黙って聞いていた事業部長が口を開きました。

事業部長「わかった。この件は、話を受けた斉藤の所が窓口となり、各部署から要員を募ってプロジェクトチームを発足させよう。詳細については社内有識者に確認して話を進める、これでいいかね」

参加者一同「はい」

事業部長「有識者への調整は、斉藤、まかせたぞ」

斉藤「わかりました」

「有識者に確認しよう」……さて、誰に聞くのか?

社内でなにか問題が起きたり、あるいは検討をしなければならないことが発生したりすると、関係者が集まって頭を悩ませます。そこで結論が出ればいいのですが、よい対策が出ずに行き詰ってしまったり、あるいは何か確認をしなければいけないことがあったりすると「有識者に確認しよう」という結論になりがちです。

わからないからわかる人に確認する、というのはいかにも正しい結論のようですが、さて、ここでいう「有識者」とは誰のことでしょうか。有識者とは一般的に、その物事について詳しい知識や経験のある専門家のことをさします。

しかし、ここで陥りがちな罠として、単純に勤続年数が長い幹部社員やリーダーに問い合わせて終わりになってしまうことが非常に多いのです。場合によっては幹部社員やリーダーにも分からないことがあり、そういった場合は「社内に有識者はいませんでした」なんて結論になったりします。

しかし、本来有識者とは、立場や役職に関係なく、その事象に詳しい人のことをさすのです。今回冒頭で挙げた事例であれば、もしかしたら中途採用のAさんが、前の会社でリプレースを手掛けた経験があるかもしれません。開発部ではなく営業部に、他社のリプレース情報を営業の武器としてたくさん調べているBさんがいるかもしれません。

正しい「有識者」に問い合わせるために

斉藤さんが事業部長や他の部署のリーダーにではなく、AさんやBさんに問い合わせをするためには、そもそもAさんやBさんの存在を知っていなければいけません。しかし、一社員が他の社員の経歴や得意分野を全て把握するなんてことは現実問題として不可能です。ですから、ある問題が発生したときに、その問題の有識者はいったい誰なのかを把握するためには、他の社員に協力してもらうことが必要不可欠です。

例えば社員のスキルや教育の受講状況を把握している人事部や経理部の社員に、「リプレースについての教育を最近受けた社員はいないか?」と聞いてみるとか、各部署のリーダーに「基幹システムを経験したことのある要員はいないか?」と問い合わせると、「そういえばうちのC君が昔そういうプロジェクトを担当していたよ」などの回答が返ってくるかもしれません。

「有識者に確認」と言われて単純にリーダーに問い合わせをするのではなく、まずはいろいろな人とコミュニケーションを取って、本件の有識者は誰なのかを把握することが大切です。本当の意味での有識者に知識や知恵を借りることが出来れば、問題の解決はもう目の前です!