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経営理念は本当に必要?経営理念は綺麗ごとなのか価値ある事なのか?

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自分の会社に経営理念が無い!会社が成長するプロセスで、そういう違和感を持つ方も多いようです。そんな時、経営理念なんて綺麗ごとだから必要無いという意見や、働く指針として必要だという意見に大別出来ます。はたして経営理念は必要なのでしょうか?

理念とは

理念とは経営者の思いで、普遍的なものです。例えば経営者が「社会貢献」という理念を立てたとします。そうすると、その会社は社会貢献を目的として経営をする事になります。商品も社会貢献が出来る商品を取り扱う事になりますし、顧客も仕入先もそれを満たす事の出来る相手先との取引となります。

従業員の採用もその理念を念頭に、理念に合う従業員を採用する事となります。例え利益が出るからと言って、社会貢献が出来ない引き合いが来たときには、断る事となります。つまり理念は会社の価値観そのものであり、例え経営者が世代交代しても、その理念は変わりません。

方針との違い

理念と共にうたわれる事の多い方針とは、理念とどう違うのでしょうか?方針はその会社の進むべき指針ではありますが、理念の様に普遍的ではありません。例えば業界の変化に応じて、企業は変化に対応しなければなりません。経営方針はその変化とともに同じく変化します。時には方針を変えながらの短・中期でのビジョン。それが経営方針です。

綺麗ごとではないのか

理念は綺麗ごとだから不要だ、と仰る人がいます。確かに経営者の価値観をオープンにするものですから、聞こえの良いものが多いです。その上、理念を実践出来ていない会社も、とても多いのも事実です。ですので、理念は綺麗ごとだから要らないという意見が出てくるのでしょうが、それは単純に理念の設定が間違っているだけの事だと思います。

理念を立てる事が目的であれば、確かに理念は要らないかもしれません。しかし、理念の中身が目的である訳ですから、それに向かって会社を経営する事は、要らないという性質のものではありません。言い換えれば、要らないと言われるようなその理念自体が、要らない対象だという訳で、理念本来の意義は必要だと思います。

必要な理由

では、もう少し具体的に理念が必要な理由を説明します。例えばR社というベンチャー会社があるとします。R社には経営者を含めて5名の社員がいます。R社はベンチャー企業であるため、時代の変化に柔軟に対応しなければなりません。そのために5名で、自由な発想で様々な事業展開を行っておりました。しかし、次第に5人の方向性の違いが浮き彫りになって来ました。

Aさんは利益さえ取れればどんな仕事でもやるという考え、Bさんは世の中の役に立つ仕事だけをやりたいという考え、Cさんは現状の仕事をおろそかにして、新規事業だけに取り組み、Dさんは会社の人間関係に対してドライで、飲み会やレクリエーションなどもほとんど欠席、それは自由なので良しとしても、コミュニケーションすら取ろうともしませんでした。

そんな中E社長は、会社が人という所から自滅する危機感を感じました。しかし、どうでしょう?もし理念を共有出来ていたら。R社の理念は「人から感謝をされる仕事で社会貢献」であるとE社長が打ち出し、それに共感出来る社員を集めていれば、このような事にはならなかったのではないでしょうか?

Aさんのように利益だけで受注する事も無く、Cさんのように既存の仕事をおろそかにする事も無く、Dさんのように会社と距離を置くことも無かったのではないでしょうか?ひょっとしたら採用していたのはBさんだけだったかも知れません。大学のサークルで例えると、Aさん、Bさん、Cさん、Dさん、Eさんが5人でサークルを立ち上げたけれども、自分たちが何サークルか分からないというのと同じ状態です。

時間が経って、Eさんが「テニスサークルをやろう」と言った所、Aさんが「いずれはサッカーをやるつもりだったから入ったのに」と言ったり、Bさんが「スポーツ系のサークルは体力の無い僕には無理」と言ったり、Cさんが「ただ集まるだけでいいと思ってた」と言ったり、Dさんが「これってサークルだったの?」と言ったり、最初に目的設定が出来ていないまま時間が経つと、後からその目的が明確化した時に、誰かが去らなくてはならなくなります。

ですので、企業にとっての価値基準である理念は、経営者の思いとして早い段階から必要で、普遍的な理念に対して、変化に対応するための経営方針も、必要なんだと思います。その会社が産声をあげた時の、経営者の思いを形にする事は重要だと思います。