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交渉事の極意とは?結局正直に真摯に、ということに尽きるのかも?

交渉の幅とは?

私、本業は不動産屋さんです。仲介業は交渉、条件調整が仕事の中心。もともと利害の相反する売主と買主の合意を形成することが仕事です。

売主さんは当然ながらできるだけ高く売りたい。買主さんはできるだけ安く買いたい。売主さんはいろいろ面倒なことを言わずに現金で買ってくれたら嬉しい。買主さんはローンやら買換えやら条件が整ったら買いたい。

例えば一番わかりやすい価格の話をしましょう。もともと売主さんの希望は5千万円で売りたい場合。もちろん市場価格を調査した上ですが、5,200万円で売り出したとしましょう。売主さんには「200万円は交渉の幅として持たせてください」と予めお話ししておきます。

さらに、ご希望通りの価格で売れればいいのですがなかなかそうもいかないのが現実ですからそこも見越して。「最悪は4,500万円まで覚悟しておいてください」と布石を打っておきます。

この場合、5,200万円から5,000万円までの間の金額で「買いたい」と言うお客さんが現れた場合には私は独断でOKできます。そして4,500万円から5,000万円までの間のお客さんが現れた場合、売主さんに「ご相談」できます。

こういうテクニックは、不動産屋じゃなくとも大なり小なりみんなが現場で行っていることではないかと思います。これが「交渉の幅を持っておく」ということ。矢面に立つのは不動産屋でも当事者はあくまでも売主さん。これをわきまえていないと

  • ガキの使いタイプ・・・いちいちお伺いを立てないと何の判断もできないため、何のための仲介業者なのかわからない
  • 勝手に判断タイプ・・・良かれと思って(若しくは勘違いして)売主に相談すべきことを相談せず勝手に話を進めてあとからトラブルになる

のどちらかになってしまいます。

交渉しようと思わない。ゴールをきちんと設定しておくこと

いざ、交渉ごとの真っ只中に立つと、目の前の相手の言うことをいちいち打ち負かしていかなければ、といったよくわからない使命感に駆られてみたり、自分に有利に持っていくために相手の譲歩の余地を奪ってしまったり、交渉そのものに翻弄されてしまうことがよくあります。私も若い頃は交渉下手でした。気が付いたら土俵際、とか逆に相手が追い詰められすぎて「もういい」といなくなってしまったり。

交渉の極意はたぶん、「交渉しない」ということだということが身体でなんとなくわかってきたのはここ五年くらいのことでしょうか。まず、自分の側の目指すべきゴールをきちんと設定する。そして大切なのは相手にも譲ること。

どんな取引であれ、どちらかに一方的に有利な内容のものは近い将来破たんします。例えば、売主さんと買主さんの間での交渉であれば、売主に有利にしよう、とか買主に有利にしようとか、そういうことを考え始めるとたいていうまくまとまらなかったりするのです。

当事者が誰かを常に明確に

仲介業の場合、仲介者は「当事者」ではありません。ここ、わかっている不動産屋さんって意外と少ないので、ご自身がお家を売ったり買ったりするときに不動産屋さんを選ぶときは一つの指針としてみても良いかもしれません。

話は逸れましたが、賃貸でも、住むのは自分たちなのに不動産屋さんに振り回されて、なんてことよくあります。誰かのために交渉をする、という立場に立った時、「当事者は誰なのか」を明確にしておくと答えがぶれません。同様に交渉の相手方も代理人の場合がよくあります。このときも、「相手方の当事者は誰か」「相手方の交渉窓口は勝手に動いていないか」を気にしておくとことがスムーズです。

今や一度も顔を合わせたことのない相手から物を買うなんて当たり前の世の中です。それでも、ブラウザの向こう側には生身の人間がいるということを忘れないことが大切ではないでしょうか。

そうそう、それから交渉のテクニックをもう一つ。とにかく「わかりやすい言葉で丁寧に説明を尽くす」これだけでもずいぶんスムーズに物事が進むこと請け合いです。