職場の人間関係が悪くて転職を考えるのは「逃げ」なのか?
転職を考える時、人にはそれぞれの理由があるものです。
倒産や事業所閉鎖などの、雇用側の都合で転職せざるをえない場合は選択肢などありません。仕事をしなくても生きていけるだけの充分な財産でも持っていれば別ですが、普通は次の仕事を探すために、とにかくひたすら活動するしかないわけです。転職するかしないかを悩む暇もないのが会社都合による転職ですね。
ネガティブな要因で転職を考えると
しかし、自己都合で転職を考える場合には、おそらく決意するまでにいろいろなことを考え、悩むものではないでしょうか。念願の資格を取得できたから――。そんなポジティブな理由であれば、転職しようかどうしようかと迷うことさえ、ある意味幸せです。大いに悩みましょう。
しかし、残念ながらそのようなポジティブな理由からではなく、とことんネガティブな要因で転職を考え始めたとしたら、どうでしょうか。例えば、職場の人間関係が原因で、体調を崩してしまうほどストレスを感じているような場合です。
- 原因不明の頭痛や吐き気が頻繁に起きる。
- 気づいたら円形脱毛症ができていた。
- 夜、まともに眠ることができない。
- 明日は月曜日だと考えるだけで体が震えて冷や汗をかく。
などなど、症状は人によってそれぞれ違います。こんな状態に陥ってしまった時、人は果たしてまともに仕事をこなし、まともな社会生活を送り続けることができるものなのでしょうか。人間関係が原因で感じるストレスは、どこまでなら平気で、どこからが苦痛になるかは人によって大きく差があるものです。
健全な精神と健康を削ってまで続ける価値があるのか
ところが、仕事を替わろうかどうしようかと誰かに相談したところ「人間関係が悪いぐらいで辞めるなんてもったいないよ。どこの職場でもそういうのは多かれ少なかれあるものだから、もう少しがんばってみたら?」と意見を返されたことで、さらに自分を追い込んでしまう人がいます。
もちろん、「そうか、そうだよね。私ちょっと甘かったかもしれない」と思える程度のことなら、確かに転職する必要などないのでしょう。一時的に気持ちが弱ることは誰しもあることです。そこで思いなおせるのなら、それはそれで良いのでしょう。そんな時は転職よりもストレス発散や気分転換について考えるべきなのです。
しかし、どうにもならないほど職場の人間関係がストレスになっているのだとしたら、自分の健全な精神と健康を削ってまでその仕事を続ける価値があるのかどうか、真剣に考える必要があるでしょう。そこは他人の判断に委ねてはいけません。あなた自身が決めるべきなのです。
そして、この職場に居続けたら自分はダメになると判断したのなら、1日も早く新たな環境を求めて転職へのステップを踏み出しましょう。すでに弱りきってボロボロになっている心と体を「自分は逃げているだけの弱者かもしれない」などと、さらにムチ打つ必要などないのです。
そうは言っても『人間関係が原因で転職する』=『嫌なことから逃げる弱い人間』と考えてしまう人は少なからずいるものです。昔からある『根性論』が歪な形で意識の底に残っているから、なのかもしれません。
辞職する時は円満退社が望ましい
しかし、逃げるというのは生き延びるための有効な手段です。どうにもならないほど現在の職場での人間関係がつらいのであれば、転職という手段で社会人としてのあなたを生き延びさせることに何の遠慮をする必要があるでしょうか。
現在の職場で精一杯努力をし、活路を見出そうと頑張ったけれど、どうしてもダメだと判断したのなら、それは正当な理由であると胸を張って転職活動に励むべきです。もちろん、「明日辞めます」では社会人としての常識を疑われますので、きちんとした手続きを踏んで転職へ備えましょう。
当たり前のことですが、転職には現職の辞職が欠かせません。気持ちの問題は別にして、書類上だけでも円満な退社を目指すことが望ましい姿であることを忘れないでください。
甘い考えで転職は辞めましょう
ただし、この考え方は単なる甘チャンを擁護しているわけではありません。そこはどうぞ取り違えないでくださいね。
「始業が朝8時と早く、寝坊が多くて上司に何度も叱られてしまいました。私は低血圧だから仕方ないのに酷いですよね。だから転職しようと思って…」
はい、これは単なる甘チャンです。低血圧だから朝が弱いという言い訳に、医学的根拠はありません。この程度のことで辞めるの辞めないのと騒ぐような人は、いない方がマシだからさっさと辞めてくれと言われるのがオチですよ。