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派遣登録したのに仕事が来ないのは違法?労基に駆け込んだ男との闘い

派遣登録にはいろいろなタイプの人がやってきます。

一口に「やる気があります」と言っても、それがどの程度のものかは千差万別なのがコワイところでしょうか。

ある地域の派遣業界において、かなり名前の知られた登録者がいます。

仮にMさんとしましょう。

Mさんは多数の派遣会社に登録がしてあります。

そして仕事の紹介を待っているわけですが、おそらくMさんに仕事の紹介をする派遣会社はありません。

30代に入ったばかりの男性で、体調が悪いわけでもなく勤務条件としてはフルタイムで働くことのできる人です。

話し方は少し癖があるものの、はっきりとした口調で受け答えをするし、見た目もごく普通。

それなのに、どうしてMさんに仕事を紹介する派遣会社がないのでしょうか。

パソコンは得意どころか…

登録の際、持参してもらった履歴書と記入を終えた登録申込書を見ながらMさんといろいろな話をしました。

Mさんは事務系の仕事に就きたいという希望があり、パソコン操作などにはかなり精通しているという自己申告。

ExcelやWordの操作はもちろんのこと、Accessもいけるし、ある程度のプログラミングもできるとのことでした。

ところが、話をしていると、とてもそうは思えない違和感が。

パソコン操作が得意どころか、基本的な部分すら理解していない印象を受けるのです。

そして、パソコン操作のスキルチェックでもそのような結果が如実にでていました。

Excel、Wordすらまともに使うことはできず、かろうじてインターネットが閲覧できる程度だったでしょうか。

かと言って、派遣登録の際のスキルチェックは出来ないことを証明して相手をやりこめるための場ではありません。

それでも一応得点と結果を伝えたところ「PC環境が自分向きではなかったから」とのこと。

なんじゃそりゃ…。

そして事務職以外の仕事はMさん自身が頑なに拒絶するので、結論として仕事の紹介は不可だと判断しました。

ところが、ものすごかったのはここから。

毎日のように「事務の仕事はまだ紹介してもらえないのか?」と再三にわたって問い合わせの電話が入るようになったのです。

紹介できる仕事はないと断っても求人情報を掲載すると目ざとく発見し、「ここに掲載されている仕事を紹介してほしい」と喰らいついてきました。

当初は「あの求人は女性事務員を募集しているもので…」と説明することで納得してもらっていたのですが、次第にそれではおさまらなくなっていきます。

さらには、突然事務所に押しかけてくるのも一度や二度ではありませんでした。

ちょうどその頃、たまたま複数の派遣会社を使っている派遣先で他社の派遣コーディネーターと話をする機会が。

偶然Mさんの話題になり、そのコーディネーターがかなり憤慨したのです。

訳をたずねると、驚くべきMさんの実態が。

いわく、仕事を紹介したら就業初日になんといきなり遅刻をしたのだとか。

おまけに働き初めて2時間ほどしたところで、『これは僕のやるべき仕事ではない』と無断で帰ってしまった、というのです。

そして、さらに別の派遣会社営業も交えて話しをすると、同じような経験をしているではありませんか!

そんな時、突然労働基準監督署から呼び出しが…。

労基もまきこんでの攻防へ

労働基準監督署に出向くと、呼び出された理由はMさんのことでした。

「事務員として働きたいのに男女差別で自分には仕事をまわしてくれない」とMさんが労基に駆け込んだらしいのです。

登録の際の状況を説明し、事務職としてまったくの不適正であることを説明することとなりました。

どうやら名前をあげられた派遣会社は複数にのぼったらしく、結果としてどこも同じような説明に。

労基の担当者も困り顔で、求職者が誤解しない理由で仕事の紹介ができない旨をはっきり説明してほしい、とのこと。

「あなたに適性がないから仕事の紹介はできません」と真正面から言ってもいいわけですね? と確認すると労基の担当者も唸るしかありません。

そして、婉曲な断りが通じないのであればそれもいたし方ないという結論に。

その後、またしてもMさんから仕事の問い合わせがあったのでここぞとばかりにはっきりとお断りしました。

この仕事はExcelをかなり使用するのでMさんには難しい、無理だ、と。

当然のようにMさんは「私ならその程度はこなせる」と食い下がりましたがあくまでもお断りの方向へ。

またしてもMさんは労基に駆け込んだのです。

何度駆け込まれたところで、Mさんを派遣して会社の信用を損なうことはできません。

そうこうするうちに、Mさんからの問い合わせがふっつりと途切れました。

今どこで何をしているかはわかりませんが、その地域の派遣コーディネーターと労基の担当者を困らせていないよう祈るばかりです。