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本当に国際化できる?海外企業と日系企業の人事戦略の差に迫る!

日本では入社式シーズンが終わって、フレッシャーズが研修のため集団で街を移動する姿をよく見かけるようになりました。まあ、これは大手企業に限った話で、中小企業ではもう既に実務で働いている方が多いのではないでしょうか?

しかしながら、この「入社式」というセレモニーは日本のどの会社でも一応は開催しているようです。海外ではこうしたセレモニーはほとんどなく、海外から来た人にとっては随分異様な光景に映るようですが、これは区切りを付ける日本人独自のマインドによるものかも知れません。この後、研修を経て各部署に配属され先輩社員によるOJTが始まるのですが、これには結構時間がかかります。

今までのように右肩上がりの業績を前提にした経営ではこの進め方で良いのでしょうが、今や大手企業であっても「一寸先は闇」の状態が続いている経済状況。世界経済がどう転ぶか解らない不透明な時代では、今まで通りの人事採用制度では立ち行かなくなっているのは一目瞭然であると感じます。

今や日本の製造業は一部を除き、海外での経営に軸足を置かなければならない状態です。フレキシビリティーに富んだ海外企業と戦わなければならない日系企業にしては、どうも人事採用制度が随分お粗末なような気がしてならないのです。企業経営に最も大事な四種の神器、「ヒト・モノ・カネ・情報」のうち、一番大事な「ヒト」に対する重要性を軽視しているような気がします。

まず気になるのが就職活動時期。日本では横並びで切りの良い4月入社。夏、秋に内定をもらっても働けるのは4月以降。半年以上空くわけです。その間企業との関わりはほとんどなく、たまに呼び出される程度で、企業と学生のつながりはありません。

方や海外では、優秀な学生は大学2、3年で就職が決まり、卒業までインターンシップ制度で長期休暇中に内定した企業で少し働いてみて、ミスマッチであれば早々に内定辞退してマッチする会社を探すかリクルーターを通してアプローチします。

つまりトライできるチャンスがあるわけです。これによって社会や企業とのつながりも体験でき、在学中でも企業から与えられた課題(有給で)をこなしながら企業とつながる事によって体質や雰囲気を実感できるのです。

これには企業側と学生側双方にメリットがあります。企業側とすれば優秀な学生の囲い込みができ研修期間が大幅に短縮できるので人件費を圧縮できます。

学生側は企業とのマッチングが良ければ、卒業後は即戦力になれますし、アンマッチングであっても次回にチャンスがあります。つまり企業と学生の関係が比較的平等条件で成り立っているのです。日本はあくまでも「雇う側」「雇われる側」で上下関係が存在し、平等な関係ではなく常に主導権は雇用側にあるのです。

次に気になるのは企業の人事採用戦略の有無です。日本企業は毎年「これだけの人間が退社する見通しなので、来年はこの人数を補充する」と言ったいわば丼勘定。ましてや採用は同一民族の日本人が大半。

方や海外企業は「来年は経営計画に基づき、このビジネスを始めるのにこの分野や技術を得意とする人材を何名採用し、こんな仕事をしてもらう」と企業経営計画に基づいた人事採用戦略が綿密に組まれ、また採用は全世界の学生を対象とするのです。

だから日本企業は入社後の研修に時間が掛かり、現場への配属まで1年程度掛かってしまうのです。「人事、採用、教育に時間と費用が膨大にかかるので採用を控える」と言う企業は「人事戦略はありません」と公言しているのと同じで、今後の経営回復は困難だと思います。

このように人材採用だけ捉えてみても大きな違いがあるのです。今や日本の製造業は大きな転換期を迎え、海外企業との競争は避けて通れません。働くのはあくまでも「人」なのです。海外で通用する人事戦略を構築できる体制を作り上げることが最重要課題であります。この重要性に早く気づかなければ中国で失敗した多くの日本企業の二の前を再び経験することになるでしょう。

また最後に申し上げたい事は大企業はもとより、海外進出する中小企業こそ人事戦略の重要性に気づかなければならないと言う事です。「英語や中国語が話せる人材」など枝葉の話ばかりする日本企業が国際化出来るのか非常に心配なところであります。